2019年度の研究により、冷間溝ロールや線引加工の加工度を大きくする事でLD <110>集合組織の集積度が増す事、その様な集合組織においてもLD<110>単結晶が得られる事、理論の通りにLD [110]単結晶の垂直方位のTD[1-10]方向において負のポアソン比を確認する事が出来た。これらの結果を受け行った研究により、今年度は以下の成果が得られた。 (1)オーセチック特性の定量的評価:LD[110]に近い方位での特性について定量的な調査したところ、垂直関係にあるTD[1-10]、TD[1-11]、TD[001]において、それぞれほぼ理論通りのポアソン比の異常が確認出来た。この中で、特にTD[1-11]についてはポアソン比がほぼゼロとなる事、またTD[001]においてはポアソン比が1を越える事が新たに明らかとなった。 (2)弾性定数の測定: CuAlMn単結晶について共振法を用いて各種弾性定数を調べ、理論ポアソン比を算出した。また歪ゲージにより得られた実測値や理論計算と比較してその様な異常な特性の起源を考察した。その結果、負のポアソン比は、C’=(C11-C12)/2が非常に小さく結晶異方性定数Aが大きな場合に生じる事がわかった。また、理論と実験値は良い一致を示し、サブグレインの存在はあまり影響しない事が判明した。 (3)用途と製造コストの検討:製造コストの削減を考え、圧延加工を利用した再結晶集合組織による負のポアソン比材料について検討した。その結果、加工熱処理を工夫する事により(1-12)<110>もしくは(001)<110>集合組織が得られ、多結晶試料でも集合組織によるTD方向のポアソン比制御が可能である事が分かった。(001)<110>集合組織材を用い差し込みは簡単だが抜く事ができないといった機械ダイオード(機能性ファスナー)に関して、実用化に最も適する形態について検討した。
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