研究実績の概要 |
本研究ではレーザ誘起プラズマ分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy: LIBS)によって簡便かつ迅速に材料中の水素をマイクロメータスケールで3次元的に定量表示する手法の確立を目指す。本年度は、LIBSによる水素の定量法を確立するために重要な要素および水素分析の精度に関して調査した。 混合比を変化させたMgとMgH2の圧粉体を水素分析の標準試料(0, 0.1, 0.2, 0.5, 1.0, 2.0, 3.0, 4.0, 5.0, 7.6 mass%)として、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン)を導入して、LIBS測定を行った。不活性ガスの種類と測定圧力を変化させたところ、アルゴン雰囲気よりヘリウム雰囲気のほうが発光強度が大きかった。さらに、減圧(3000 Pa)ヘリウム雰囲気で測定を行うと、水素由来の656.28 nmのピーク強度は水素濃度に対して直線的な増加を示した。アルゴン雰囲気よりヘリウム雰囲気のほうが発光強度が大きい原因は、それぞれの準安定状態のエネルギーの違いによるものであった。この結果、LIBS測定によって、0.2~7.6 mass%の範囲で水素を定量できることがわかった。また、この定量測定の際、測定試料および配管や試料室内に吸着している水分の除去が重要であることもわかった。 この測定法を用いて、熱処理によって水素を一部除去したMgH2の定量を行ったところ、ガス分析による定量とほぼ同じ水素濃度が得られ、本手法の水素定量の精度の高さが示された。
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