研究実績の概要 |
ハイパーラマン散乱による深部の歪場イメージングに向けて、多光子励起フォトルミネッセンス法を用いて非輻射的性質や伝搬挙動などの情報を基に貫通転位を識別し、ラマンマッピング測定から刃状成分を検出した。 ハライド気相成長法で作製したn 型 GaN 基板に対し、表面から深さ 100 um 程度の領域について多光子励起顕微鏡を用いてバンド端近傍発光の三次元分布を測定した。次に、ラマン分光装置を用いて同位置の表面近傍の GaN E2(high)モードのピークシフトマップを得た。 表面の凹凸や研磨傷は、多光子励起フォトルミネッセンス像の表面二次元像やラマンマッピング像の輝度像に反映され、これらを指標に画像の位置対応をとることができた。転位の位置は多光子励起フォトルミネッセンス像とラマンマッピング像でおよそ一致し、同一の転位を異なる手法で評価することができた。多光子励起フォトルミネッセンス法を用いて観察された貫通転位を刃状・らせん・混合転位に分類し、それぞれについてE2(high)振動モードのラマンマッピングを取得したところ、刃状転位と混合転位の近傍において±0.5 cm-1程度のラマンシフトが発生した。これは刃状転位による弾性歪によって説明することができ、ラマン分光測定によって刃状転位と混合転位を検出できることを示している。また、 ハイパーラマン散乱は通常のラマン散乱とは選択則が異なるため、検出可能な振動モードが異なる。ラマンテンソルから、多光子励起フォトルミネッセンス像における結晶c軸方向にレーザを入射し後方散乱を測定するz(x,x)z + z(x,y)z配置では、E1振動モードが検出できることが分かった。GaNにおけるE1振動モードは741 cm-1の波数で振動することから、通常のラマン散乱と同様の波数分解能の測定で検出できる可能性が示された。
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