研究課題/領域番号 |
19K22045
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
多々見 純一 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (30303085)
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研究分担者 |
高橋 拓実 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「革新的高信頼性セラミックス創製」プロジェクト, 研究員(任期無) (30715991)
李 頴 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「革新的高信頼性セラミックス創製」プロジェクト, 研究員(任期有) (40789319)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | セラミックス / 透明 / 蛍光体 / 窒化物 |
研究実績の概要 |
本研究は、窒化物系無機化合物の特異な発光特性と、研究チームの有する窒化物系セラミックスの高機能化に関する知見と粉体合成・セラミックス製造技術を融合しながら、光の散乱源となるため従来の透明体作製で疎まれてきた材料中の不均質構造を制御するだけでなく、積極的に利用するという斬新な発想に基づき、光の散乱源となる気孔や第二相、可視光の波長程度の粒径の粒子を限界まで除去することで窒化物系セラミックスの透明化を実現することを目的としたものである。まず、α-サイアロンセラミックスバルク体の透明化は、超高圧静水圧加圧成形による成形体の均質性向上を中心に研究を進めた。その結果、150℃に温度を上げた静水圧加圧成形により、ガス圧焼結のみの焼成で95%以上の高い密度の焼結体を得ることができた。得られたEu賦活Ca-α-サイアロンセラミックスをレーザー励起で発光させたところ、強い白色発光が確認された。また、ビーズミルによる原料粉体の微細化についても検討した。原料のうち、Si3N4粉体のみをビーズミル処理することにより、優れた蛍光特性を示しながら、従来よりも低温での緻密化できることを明らかにできた。さらに、各種希土類添加物を変化させた実験も行い、HoからLuにかけての原子番号の大きな希土類元素の酸化物を添加することが、α-サイアロンセラミックスの透明化に非常に有効であることも見いだすことができた。特に、Ho、Er、Tm、Ybを添加した透明体はレーザー光源等への展開も期待され、引き続き検討を進めていく。高い熱伝導率を有するAlNについても透光性の向上に関する検討を行い、分極率の大きな希土類元素としてDyやGdの酸化物を焼結助剤として用いることで透光性が向上することや、Mnを共添加することで紫外線照射だけでなく熱や機械的刺激によっても発光する透光性バルク体を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
原料粉体の選択的微細化、超高圧温CIPの利用など緻密化に効果的な粉体プロセスの要素技術を確立できつつある。反応制御のための粒子複合化技術も組み合わせることで、さらなる透明化も期待される。この材料はレーザー励起に十分に耐えることも確認できており、次世代のレーザー照明・ディスプレイへの展開も見いだされた。また、添加希土類元素についてはLaからLuまですべてを試みた。当初、液相の粘度などから考えて原子番号の小さな希土類元素が透明化に有効であるかと考えていたが、得られた結果は逆にHo以降の原子番号の大きな希土類元素の添加が透明化に有効であることを世界に先駆けて発見した。特にこれらの元素はレーザー光源等への応用でも都合が良く、新たな展開を予見させる結果である。AlNについては、第二層の屈折率をAlNに近づけて散乱を低減させること、AlN中に固溶した酸素を除去することが透光性透光性の向上に効果的であり、原子オーダーからマイクロメートルレベルの構造を総合的に制御することの有用性を確認できた。本研究の目指すところのように、これらの寸法と分布をさらに限界まで均質化するために、原料粉体の構造制御を引き続き行っていく。Mnの添加で新たな機能が得られたことも特筆すべき点である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究代表者がこれまでに精力的に進めてきた機械的粒子複合化プロセスを利用して、原料粉体の複合構造制御を図り液相焼結における液相生成と窒化物蛍光体のその場合成を同時かつ精密な制御を行って光散乱のさらなる低減を目指す。150℃での超高圧CIP処理は有効であったので引き続き検討する。HIP処理の条件についても、予備GPS焼結体で従来よりも高密度のものが得られているので、さらに検討を進める。併せて、不均質構造の定量的な評価を光コヒーレンストモグラフィーにて進め、原料粉体の混合過程、成形過程、焼成過程における不均質構造の動的形成過程を調べて、透明化にフィードバックする。AlNについては、水酸化物等を作るので添加のしにくいLaについて、添加方法等を検討してAlNセラミックスを作製し、透明化を図る。
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