研究実績の概要 |
アルカリイオンと遷移金属イオンを高濃度に含有するケイ酸塩ガラスの結晶化に関する研究の過程で、可視光領域で透明性を有する結晶化ガラスを見出した。析出した結晶は典型的な立方晶系のX線回折図形を示し、室温における電気伝導性も高くなることが明らかとなったが未解明な点が多く珍しいガラス系である。そこで、本研究では可視域で透明を有する遷移金属酸化物を高濃度で含有する酸化物ガラスおよび結晶化ガラスの形態、透明結晶化、光学的・電気的特性、組成との関係を解明することを目的に、 Na2MSiO4(M = Mn, Fe)と同組成の33.3Na2O-xMnO-(33.3-x)FeO-33.3SiO2ガラスの作製と結晶化挙動の解明そして光学的性質、電気的特性を評価した。 Na2MSiO4(M=Mn, Fe)の結晶量論組成と等しい33.3Na2O-xMnO-(33.3-x)FeO-33.3SiO2のガラス化を確認した。これらを熱処理し結晶化することでNa2MSiO4(M=Mn, Fe)結晶の作製が可能であることを明らかにした。また、熱処理温度の制御によってNa2MSiO4(M=Mn, Fe)結晶の準安定相を発見し、この結晶が40 nm程度の結晶子サイズで析出する場合に透明結晶化ガラスとなることを明らかにした。光吸収分光、光電子分光法そしてX線吸収微細構造分析から、この準安定相における遷移金属イオンはMn2+イオンとFe2+イオンが占め、その配位数は四配位サイトよりは六配位サイトが支配的である構造を有することを初めて明らかにした。また、イオン伝導性があることから四配位サイトをとるNaイオンが存在すると示唆される。
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