前年度に引き続き、欠陥強磁性の報告があるTiO2を対象に研究を進めた。2019年度はルチル型TiO2単結晶のナノ周期アレイと、TiNの酸化を利用して作製したTiO2ナノシリンダーアレイを対象とした。これらのTiO2ナノ周期アレイは、個々のナノシリンダーのミー共鳴場や周期構造に基づく光回折モードが互いにカップリングして光と相互作用する興味深い分散関係を提供するが、個々のナノシリンダーのアスペクト比を大きくすればミー散乱場としての機能が向上すると考えられる。そこで2020年度は前年度とはまったく異なる手法を用いてTiO2ナノシリンダーならびにその周期構造体を作製することを試みた。具体的には、金属Tiを出発物質とするリフトオフ法を用いた。基板上にレジストを塗布した後、電子線リソグラフィーでナノ構造パターンを形成した。電子線蒸着を用いてナノパターン化したレジスト膜上にTi薄膜を製膜し、溶媒中に浸漬することでレジストを除去した。このようにして得られたTi金属ナノシリンダーアレイを空気中で酸化することによりTiO2ナノシリンダーアレイを作製した。酸化によって個々のナノシリンダーは膨張するものの、反応後の個々のTiO2ナノシリンダーの形状と大きさは均一なものとなり、周期性も保持された。得られたアレイの光吸収スペクトル測定と数値シミュレーションから、ミー散乱と光回折によるモードが明確に観察された。 また、Tiと同じ4族元素であるZrの酸化物(ZrO2)を対象に同様のナノ周期アレイの作製を試みた。ここではTiNからTiO2への変換に倣い、研究代表者らの先行研究で作製に成功したZrNナノシリンダーアレイを利用して、これを酸化することによってZrO2のナノシリンダーアレイを得た。光吸収測定の結果から、光損失の少ないきわめてシャープなミー共鳴モードが観察された。
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