研究課題/領域番号 |
19K22056
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北田 敦 京都大学, 工学研究科, 助教 (30636254)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 超酸化物イオン / スーパーオキシハライド |
研究実績の概要 |
超酸化物イオン(スーパーオキサイドイオン、[O2]-は、酸素分子の1電子還元体である。不対電子を1個もつので、銅(II)イオンと同じくスピン1/2を担う磁性アニオンである。量子効果の強いスピン1/2が二次元に配列してできる二次元量子磁性体は、CuO2面をもつ銅酸化物高温超伝導体のモデル系であり、超伝導転移温度(Tc)の更新と発現機構の解明に直結する物理工学の重要なテーマの一つである。高温超伝導フィーバー以来30年がたち、その理論モデルは数多い。しかし、理論を検証できるモデル物質の数は、現在でも圧倒的に不足している。そこで、非常識的な磁性イオンである[O2]-を用いて新しい二次元量子磁性体を合成し、その磁気特性の理解によって高温超伝導の発現機構に迫ることを目的としている。 [O2]-とハロゲン化物イオンを複合化したスーパーオキシハライドに着目した。銅酸化物高温超伝導体の非磁性ブロック層を模擬して、非磁性ハロゲン層の一部を[O2]-磁性層で置換するストラテジーにより、[O2]-の二次元配列の可能性を検討した。 超酸化物イオンは強い酸化力があるため、酸化耐性の大きいハロゲンであるF-やCl-を選択した。超酸化物として唯一高純度で市販されている超酸化カリウム(KO2)を、金属ハロゲン化物(MXn)と整数比で反応させて、[O2]-磁性層とハロゲンブロック非磁性層を交互に積層させられないかと考えた。 KO2とAlF3またはKO2とAlCl3の固相反応によるスーパーオキシハライドの合成を試みた。真空封入後に加熱したが、目的の物質は現在のところ得られていない。真空ではKO2の分解が優勢となっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた反応実験をこなしてはいるが、目的物質の合成がうまくいっていない。当初考えていた固相反応では拡散が遅いため高温が必要となるが、KO2の分解が優勢になってしまっている可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初考えていた固相反応では拡散が遅いため高温が必要となるが、KO2の分解が優勢になってしまっている可能性がある。そこで、室温で液体となっている「超酸化物イオン液体」(過去に我々が初めて報告)を出発物質とすることで、反応の改善と目的物質の合成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に、固相反応によるスーパーオキシハライドの合成を行い、その結果を基に実験補助を雇用して物性測定を行う予定であったが、固相反応の結果目的物質が得られていないため、実験補助の雇用は行わないこととしたこと、ならびにシンポジウムにおいて発表する案件がなくなったため未使用額が生じた。このため、液相合成と実験補助雇用による物性測定およびシンポジウムでの発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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