研究課題/領域番号 |
19K22060
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石本 卓也 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50508835)
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研究分担者 |
中野 貴由 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30243182)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 骨再生 / 骨機能 |
研究実績の概要 |
骨機能を本質的に回復する材料科学に基づいた新たな骨再建法の確立のため、「A_再生骨への人為的応力負荷による配向化」、「B_骨形成前の軟組織への牽引力負荷に基づく骨芽細胞伸展による配向化」という2つの戦略にて研究を遂行している。 1年目は、両者の動物モデルの枠組み構築を完了した。具体的には、Aは、すでに正常な骨に対しては確立していたことから、これを再生骨へと拡張し、金属疲労試験機を駆使したin vivo人為的応力負荷条件について検討し、再生骨に対する最適負荷条件範囲を絞り込めつつある段階である。ただし、正常骨と異なり、再生初期の骨は幼弱で低ヤング率であることから、負荷荷重に対する応力応答を有限要素計算を援用し予め予測しつつ実施する必要が生じており、そのために不可欠な再生骨の生体内条件におけるヤング率の解析を、ナノインデンテーション方の湿式化によって検討しているため、条件の確定にはもう少し時間を必要とする見込みである。 Bについては、創外固定の仕組みをベースとし、再生部に伸展を負荷することに成功し、特定条件下において欠損部に形成された軟組織を配向化し、それに付随しての骨芽細胞の配列化を既に達成している。伸展の方向を変えることで本来の配向方向とは別の方向への機能化も可能になると期待しており、その検討にも着手し始めている。 今後は、骨(石灰化した骨組織)の形成とその際の骨配向化と力学機能の回復を材料工学的に解析していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的達成のための動物モデルについてはおおむね完了しており、残り1年で目標を達成できる見込みであるので、進捗状況は順調と自己評価できる。上述のように、Aの方で、負荷条件検討のための解析が必要となってきているが、計画に大幅な遅延を生じることはなく、むしろ、確実に知見を蓄積しつつ遂行できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
A、B各項目での動物モデル・条件を確立し、石灰化骨を誘導し、コラーゲン・アパタイト配向化と力学機能を評価する。力学機能は、3点曲げによる再骨折リスクや、ナノインデンテーション法による材質に特化した解析を必要とする。必要に応じて得られたデータをフィードバックし、より最適な条件へと改良を加えていく。一方、配向化の際の各種生物学的因子(タンパクやサイトカイン等)の発現を解析し、マーカーとしての活用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】以下の2つの理由がある。①当初年度内納品予定であった物品(53,900円)が、COVID-19の影響で輸入が滞り納入が遅延した。②年度末近くに情報収集のために参加を計画していた学会がCOVID-19感染拡大防止のため中止になった。 【使用計画】本研究の遂行に不可欠な、実験動物(ラット)とその飼育のための物品(飼料、床敷き)、動物外科処置時の麻酔等に要する薬品類、生物学的マーカーの検出のための試薬類(抗体含む)、一般消耗品に使用する。前頁にて既述したように、追加での実験の必要性が生じていることから、そのための動物や関連用品の必要数の増加を見込んでいる。さらに、国内学会を中心とした成果報告と情報収集旅費ならびに、論文化のための費用に効率的に使用する計画である。
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