研究課題/領域番号 |
19K22066
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松田 元秀 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (80222305)
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研究分担者 |
打越 哲郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (90354216)
鈴木 達 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50267407)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ゼオライト / 固体電解質 / 配向化 / 緻密化 |
研究実績の概要 |
鉱物資源としても知られるゼオライトで世界初となる低価格な新規固体電解質の開発に挑戦する、これが本研究の終局的な狙いである。クラーク数が上位のSi、Alおよび酸素という身近な元素からなるゼオライトで、各種電池などに応用可能な固体電解質の材料設計が可能になれば、材料原料を輸入に頼る必要もなく、工業的なインパクトはきわめて大きい。また研究実施によって得られる知見は固体電解質への応用面だけでなく、理解が未だほとんど進んでいないミクロ細孔内でのイオン伝導性の学理の発展に加え、“ゼオライトの物理”といった新しい学理の創出にも繋がるものと考えている。 そのような終局目的に向かって本研究では昨年度に以下の二つの項目に取り組んだ。 (1)アナルサイム巨大結晶の合成:おおよそ1か月程度の反応を通して、数百ミクロン程度の大きさの結晶を得た。微細構造評価から、得られた結晶はゼオライトの一種アナルサイムであると判断された。この結果を基に、今後はアナルサイムの磁気異方性を明らかにしながら、磁場配向プロセスによって無粒界な固体電解質の創製を目指す。 (2)ゼオライトAやXの緻密体作製:水熱ホットプレス法によって、これまでに報告例がない程度のきわめて緻密なゼオライトAおよびXの試料を得ることに成功した。得られた緻密なゼオライト試料を用いて様々な条件下で導電性を検討した結果、固体電解質への応用上望ましいとされる0.001 S/cm以上の導電率が観測され、ゼオライトAやXは固体電解質として高い潜在性を持つことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低コストな無粒界固体電解質の創製を目指して巨大結晶の合成を以前の検討結果に基づいて昨年度研究に着手したが、合成される結晶が十分に成長したものがなかなか再現性高く得られず、その合成に多くの時間を要した。一方、市販粉末を利用して極めて緻密な試料作製には成功し、固体電解質に求められる導電率を得るに至った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、巨大結晶合成を続けながら、得られた試料を用いて研究計画書に示した計画通りに無粒界固体電解質の創製を目指す。また並行して昨年度取り組んだプロセスによって、固体電解質への応用可能となる高速カチオン伝導性発現ゼオライト緻密体の作製も行なう計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況で触れたように、試料合成に少し手間取った面がある。そのため、予定していた組織制御や物性評価などに供する試料を多数得難く、それらの評価時に必要となる物品購入を行っていないことが関係し、次年度に使用額が生じる結果に繋がった。
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