研究課題/領域番号 |
19K22070
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
幸塚 広光 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80178219)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | ゾル-ゲル法 / コーティング / 残留応力 / 緩和 / 湿度 / シリカ薄膜 / セリア薄膜 / チタニア薄膜 |
研究実績の概要 |
ゾル-ゲル法によりSi(100)ウエハ上にシリカゲル膜を作製し、600℃で焼成した。このようにして作製したシリカガラス膜の面内残留引張応力の室温での時間変化について調べた。シリカ膜の残留引張応力は、湿潤雰囲気下で静置すると減少するが、前年度に調べたセリア膜同様、300℃で乾燥させると回復した。また、湿潤雰囲気下での静置過程で、O-H伸縮振動ピークの面積の増加と膜厚の増加が見られた。880℃で焼成したシリカ膜の初期残留応力は圧縮応力であるが、この圧縮応力は、湿潤雰囲気下での静置過程で、時間とともに若干ではあるが増大した。これらの結果は、湿潤雰囲気下で静置過程での残留引張応力の減少は構造緩和によるものではなく、水の吸収または吸着による膜の膨張であることを示唆する。 一方、以前に報告したセリア膜では、乾燥によって残留引張応力が静置前のそれまで回復したのに対し、600℃で焼成したシリカ膜の残留引張応力は、静置前のそれの約1/2までしか回復しなかった。このことは、乾燥後のO-H伸縮振動ピークの面積がセリア膜では静置前のそれとほぼ等しくなるまで減少したのに対し、シリカ膜では静置前のそれまでは減少しなかったことにも見られた。また、ヘプタン蒸気中での静置過程で見られる残留引張応力の減少割合が、セリア膜では湿潤雰囲気中での静置過程で見られたそれと同程度であったのに対し、シリカ膜では、湿潤雰囲気中での静置過程で見られたそれの約56~76%にとどまった。 以上の結果より、湿潤雰囲気下での静置過程で、残留応力が減少する原因は、セリア膜においては水の吸着による膜の膨張が原因であるのに対し、シリカ膜においては水の吸着による膜の膨張に加え、水の吸収による構造緩和と膜の膨張が原因の一部であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度に、湿潤雰囲気中での室温での面内引張応力の減少が、構造緩和に基づく応力緩和ではなく、気体分子の吸着に起因する膜の膨張によるものと推察したが、赤外分光やエリプソメトリーによる分析により、仮説がより確かなものとなったため。高温で焼成されたガラス膜やセラミック膜の面内応力あるいは基板のソリが、大気中の湿度によって変化し、不安定なものであることを見出した点で、学術的な観点のみならず技術的な観点からも意義が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
大気中の水分子の吸着や吸収がガラス膜やセラミック膜の面内残留応力や基板のソリを変化させる原因となるのであれば、湿度変化に応じてこれらも変化するはずである。2021年度は、湿度に対する面内残留応力と基板のソリの変化を定量化する。また、水分子の吸着や吸収が応答の原因であれば、それらの応答に膜厚や気孔率が影響を及ぼす可能性があるため、これらの影響についても定量的な調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に有益な成果が得られたものの、コロナ禍にあって、学生諸君の通学途上や研究室での感染を防ぐため、学生諸君が実験に割くことのできる時間が、正常時の5~6割に抑えざるをえなかった。2021年度には、2020年度に購入することのできなかった試薬やシリコンウェハを新たに購入し、薄膜応力の湿度応答に関する定量的な実験を行う。
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