最終年度には、ゾル-ゲル法によりSi(100)ウエハ上に作製して焼成したシリカガラス膜とセリア結晶膜を対象とし、時間に対して湿度が矩形的に変化する雰囲気中で、面内残留応力のその場測定を実施した。その結果、面内残留応力が引張応力であるシリカガラス膜とセリア結晶膜において、湿度上昇・低下に呼応して可逆的に応力が減少・増加する減少が見られた。また、シリカガラス膜を対象とし、同様の湿度変化のもとで分光エリプソメータによる膜厚・屈折率のその場測定を行ったところ、湿度上昇・低下に呼応して可逆的に膜厚・屈折率が増加・減少する減少が見られた。以上の結果によって、酸化物ガラス膜や酸化物結晶膜において、雰囲気中の水の吸着・吸収および脱着によって膜がそれぞれ膨張・収縮し、面内残留引張応力の減少・増加を引き起こすことが明らかとなった。高湿度下で面内残留引張応力が時間とともに低下する減少が、水の吸収・吸着によるものであることが前年度までの実験で明らかになりつつあったが、最終年度の応力と膜厚・屈折率のその場測定により、より明確になった。 なお、シリカガラス膜について、気孔率が大きい場合の方が小さい場合よりも応力の湿度応答の速度が大きくなる傾向が見られた。これは、気孔率が大きい場合には水の吸着による膜の膨張が支配的で、気孔率が小さい場合には水の吸収による膜の膨張が支配的であることを示唆する。また、気孔率が数%の緻密なシリカガラス膜においては、膜厚が大きいほど応力の湿度応答の速度が小さくなる傾向が見られた。これは、膜中での水の拡散に時間がかかる結果であると理解された。以上のように、膜の面内応力の湿度応答は、気孔率や膜厚による影響を受けることを実験的に明らかにすることができた。
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