研究課題/領域番号 |
19K22071
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
鎌田 香織 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 進学課程, 講師 (00361791)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | バイオテンプレート / 微小めっき / 金属ホールアレイ |
研究実績の概要 |
本研究は、自然界のナノ・マイクロメートル領域の造形物に着目し、光学的機能の発現を指向した3次元微細金属構造体の作製プロセスを開発することを目的としている。特に、作製プロセスにおけるテンプレートとして、重点的に珪藻を構造機能化する手法を確立し、その特徴的な規則空孔配列構造に起因した光物性の評価を行う。本研究の特徴は、珪藻を材料作製にそのまま利用する独創性と表面・界面の化学反応を確立する学術的意義とを両輪とした作製プロセスの設計が挙げられる。珪藻が本来もつ構造を機能材料に転写することにより、従来作製困難である3次元微細構造材料の量産法を確立し、新しい光学機能の発現を目指す。 珪藻は、一般的に中性付近のpHの培地を用いて培養を行う。そのため、本来の遅い増殖速度に加え、他の微生物の混入が問題となる。培養環境の整備と効果的な培養条件の検討を行う。すでに複数回のフィールドワークを実施し、検討候補となるコアミケイソウ、タラシオシラ、カザグルマケイソウの3種類の中止目に属する珪藻の培養を開始している。 珪藻はシリカからなる被殻の内部に細胞を有し、細胞分裂に伴い、外側より小さい被殻ペアを内部に形成する。さらに、内部の細胞や被殻表面は、タンパク質および多糖からなる被膜に覆われている。バイオテンプレートとして利用することを目的として、それらを分離して清浄なシリカからなる被殻のみを単離し、形状を維持したまま保存する方法を検討した。 以上より、当該年度はテンプレートの量産体制の確立段階に至った。有機物が除去された清浄なシリカ被殻を得ることができて初めて、表面微小構造及び階層的な内部構造が電子顕微鏡により確認できる。今後は得られた被殻の形態観察を行い、その結果をフィードバックし、光物性に適した構造をもつ珪藻を選定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度として、主に微生物の実験室レベルにおける大量培養を行い、プロセス開発とマスプロダクションを目指した。そのために必要な装置一式はこれまでに整備した現有装置を活用し、各種珪藻の日々の培養と形態観察にかかる時間の短縮し、より効率よく本研究の目標に向けた珪藻バイオテンプレートの探索を実施したが、珪藻培養に想定以上に時間を要した。 現在、増殖度を培地の濁度にてスクリーニングするシステムの構築につとめている。培地中の珪藻個体数とODの検量線を作成すれば、極微量の培地から非常に簡便かつ効率よく増殖度をモニターできると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
清浄なシリカからのみからなる被殻を単離することができた後、無電解めっきにより、胞紋パターンに追従する金属被覆構造を作製する。ここでは、金、銀、銅めっきを重点的に検討する。一般的にシリカ表面へのめっきは、自己還元型よりも下地にニッケル層を設けることにより、より緻密な被覆膜を形成できる。しかし、無電解ニッケルめっきは、通常、金属析出速度が速く、500 nmを下限とする被膜厚のバルク状態にて被膜が形成される。コアミケイソウを用いた予備検討からも、下地ニッケルめっきにより、胞紋の空孔がすべて充填される問題があることを確認した。そこで、無電解めっきの諸条件、温度、pH、金属イオン濃度を詳細に検討することにより、目的とする金属ホールアレイ構造を作製する。被殻表面の胞紋開口は、200 nm程度であるため、金属被覆厚は100 nm未満が目標値となる。また、胞紋の貫通構造を維持したホールアレイを作製するために、均質な金属被覆を施す条件を探索する。 次のステップとして、金属ホールアレイディスクの光物性の評価を挙げる。ここでは光学特性の評価を重点的に行う。得られた珪藻めっき物を金属ホールアレイディスクとして、透過率・反射率測定を行い、表面プラズモン共鳴に由来する光の異常透過現象を観察する。さらに、金属ホールアレイディスクを溶液に分散し、異常透過の発現を検証する。この異常透過がみられる波長に吸収を示す有機半導体や色素などの機能分子を選択し、光ー分子強結合状態を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は微生物の実験室レベルにおける大量培養を行い、プロセス開発とマスプロダクションを目指した。そのために必要な装置一式はこれまでに整備した現有装置を活用する。ただし、各種珪藻の日々の培養と形態観察にかかる時間を短縮し、より効率よく本研究の目標に向けた珪藻バイオテンプレートを探索する目的のため、増殖度を培地の濁度にてスクリーニングするシステムを構築する。培地中の珪藻個体数とODの検量線を作成すれば、極微量の培地から非常に簡便かつ効率よく増殖度をモニターできる。以上より、極微量分光光度計(NanoDrop2000c)の導入を急ぎ行う。また、光物性の評価も同時に実施する予定である。測定には一般的なIR・UV-vis分光器を、電磁場理論計算にはPoyinting Opticsを用いる。いずれも現有装置であるためそれらを活用する。ただし、サンプルの巨視的・微視的構造に影響を与える作製プロセス過程は無電解めっき槽や培養用水槽に定点ハイスピードカメラを設置したコンピュータによるモニタリングシステムにより観察する。
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