本研究は、自然界のナノ・マイクロメートル領域の造形物に着目し、光学的機能の発現を指向した3次元微細金属構造体の作製プロセスを開発することを目的としている。特に、作製プロセスにおけるテンプレートとして珪藻を用い、その構造機能化する手法を重点的に探索することに重点を置いた。本研究を達成できれば、バイオテンプレートの特徴的な規則構造に起因した光物性が期待できるものである。本研究の特徴としては、藻類をバイオテンプレートとして材料作製にそのまま利用する独創性、および天然材料の表面・界面における複雑な化学反応を理解し、利用するという学術的意義に富む作製プロセスの設計が挙げられる。バイオテンプレートが本来もつ構造を機能材料に転写することにより、従来作製困難である3次元微細構造材料の量産法を確立し、新しい光学機能の発現が期待できる。 珪藻は、一般的に中性付近のpHの培地を用いて培養を行う。そのため、本来の遅い増殖速度に加え、他の微生物の混入が問題となる。これまでに、培養環境の整備と効果的な培養条件の検討を行い、コアミケイソウ、タラシオシラ、カザグルマケイソウの3種類の中心目に属する珪藻の培養を実施した。さらに、バイオテンプレートとして利用することを目的として、清浄なシリカからなる珪藻被殻のみを単離し、形状を維持したまま保存する方法を確立した。また、テンプレートの量産体制を整え、表面金属被覆構造体の作製を試みた。階層的な超微細構造を完全に転写する無電解めっきプロセスには、ピンホール形成など多くの問題があるものの、光物性評価に耐えうるサンプルを作製するに至った。金属被覆プロセスにおいては、これまでに実績のある螺旋形状の藍藻類との比較から、より最適な条件を見出しつつある。最終年度においては、光物性評価を中心に研究推進し、顕微モードの透過・反射率計測を用いた評価を実施できた。
|