本年度は、ガラスにおける量子ビーム実験、および、NMR測定の結果を基に、酸化物ガラスの構造モデルを構築し、構造モデルより求まるガラスの特徴的な構造パラメータを抽出し、議論を行った。 酸化亜鉛量の異なる亜鉛リン酸塩ガラスに関して中性子回折、高エネルギーX線回折、およびZn K端 X線吸収微細構造(XAFS)の結果を基に、3次元ネットワーク構造を逆モンテカルロ法により構築し、ガラス中の空隙を可視化するとともに陽電子消滅実験より求めた値との比較を行った。 また、仮想温度の異なるシリカガラスに関して、高エネルギーX線回折における構造因子に現れる第1ピーク(First sharp diffraction peak: FSDP)の仮想温度依存性を調査し、物性との変化量を議論した。その結果、Si-Oの相関に加えて、Si-Siの相関も仮想温度に伴う構造変化に影響を与えていることを確認した。 一方で、SPring-8を利用して、亜鉛リン酸塩ガラスの亜鉛の配位状態に関して低温におけるZn K端 X線吸収微細構造解析を行った。その結果、室温のスペクトルと振幅以外に明瞭な差異は確認できなかった。今後はより詳細に結果を検討する予定である。 ガラスにおけるそれぞれの構成元素における配位数は、密度を正確に求めたのちに、量子ビームを用いた回折実験、および、XAFS実験を基に議論する評価する必要があり、今後は、より基本的な物性パラメータに重点を置いて研究を実施する必要があるという研究指針を得ることができた。
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