研究課題/領域番号 |
19K22075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
増田 隆夫 北海道大学, 工学研究院, 特任教授 (20165715)
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研究分担者 |
吉川 琢也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20713267)
中坂 佑太 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30629548)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 化学工学 / 反応工学 / ゼオライト / 錯体 / クラスター |
研究実績の概要 |
原子数個からなる金属クラスターや金属の周りに有機配位子が配位した金属錯体は、それ自身が非常に高い活性を有する。その一方、金属クラスターは気相のフリーな空間で不安定であり、その合一により活性低下が生じやすい。また、金属錯体は反応中に錯体自身の分解が徐々に進行する。これらの要因により、金属クラスターや金属錯体の活性を安定に維持することが困難である。本研究は、この問題を解決するために、ゼオライト構造を有するメタロシリケートのナノ空間の制御性を活用し、遷移金属クラスター、錯体をメタロシリケートの細孔内に形成させた新しい構造体の創成に挑戦することで、新しい触媒反応プロセス提案を目指している。 2020年度は、Feを導入したY型ゼオライトを主対象としてその細孔内での錯体形成および触媒反応への応用を検討した。適当な処理方法によりY型ゼオライトの骨格AlをFeに置換した。この細孔内にFeイオンと2,2-ビピリジンを導入し、Y型ゼオライトが持つケージ内で錯体を形成させた。UV-visやXRDの結果からも錯体の形成を支持することを確認した。この材料をベンゼンからのフェノール合成反応に応用したところ、既報値よりも高い性能を示すことを確認した。研究計画で目標に掲げたY型のフェリシリケートの合成には至っていないが、本研究で合成したY型のアルミノフェリシリケートを用いることで無機材料に固定化したFe錯体の高活性化を図ることに成功したと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにMFI型およびベータ型の骨格を有するゼオライトのフェリシリケートを合成し、その細孔内部に鉄イオンを用いた金属錯体を形成させた。また、Y型ゼオライトの骨格Alの一部を鉄に交換したフェロアルミノシリケートを調製し、そのナノ空間内において金属錯体を形成させ、触媒反応に応用したところ、従来のY型ゼオライト(アルミノシリケート)のナノ空間内で錯体を形成させた構造体に比べて高い活性を示すことを見出した。これはゼオライトの骨格に異種原子を導入したゼオライトのナノ空間にて金属有機錯体を形成させることにより、従来のアルミノシリケートのナノ空間で形成する金属有機錯体よりも高い触媒反応活性、選択性を発現する可能性があるという当初の着想を実証することができたと考えており、概ね順調に進展していると考えている。また、研究期間を延長することで、本触媒系(鉄錯体、鉄クラスター)の高活性化を図る。
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今後の研究の推進方策 |
ゼオライトFrameworkを利用した構造活性種による触媒反応の高度化を図る。具体的には、本研究で調製したY型の骨格を有するフェロアルミノシリケートを用い、異なるリガンド種を細孔内に導入した錯体触媒を調製し触媒反応を実施する。Feの導入量についても検討を行う。また、導入するFe量を制御して調製した鉄クラスターを有する構造体の触媒反応への応用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初計画していた国際学会や国内学会等への出張が出来なかったため、残額が発生した。本研究は研究期間を1年延長し、開発触媒の触媒活性向上を図る。研究実施に必要となる実験器具や試薬等の消耗品として使用する。
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