研究実績の概要 |
異方性ナノ結晶の物性は露出面・アスペクト比の制御により球状ナノ結晶とは異なる強い形状依存性有し、特異な物性を発言する。しかし、その比表面積の高さから合成は困難であり非常に希薄な溶液中での合成が行われてきた。結果、多量の廃液を排出するため、その合成には環境負荷・コスト面での課題が存在する。そのような背景の中、申請者は配位高分子であるシュウ酸銀結晶に特異な形状を選択的に形成する形状誘導効果があることを見出した。本研究では、配位高分子を形状誘導効果のある反応場として応用した、異方性ナノ結晶の高濃度合成法の確立を目指し研究を進めた。その結果、Agナノプレートを選択的に合成する配位高分子であるシュウ酸銀-PVP水溶液懸濁液中へ過酸化水素を混合し、酸化エッチング反応を導入し熟成過程を考慮した結果、均一なサイズのAgナノプレートを既報の論文の300倍以上の高濃度条件での合成に成功した。これにより、配位高分子の形状誘導効果を利用した異方性ナノ結晶の擬似的超高濃度合成の道が拓かれた。次に、形状誘導効果を持つ配位高分子を探索した。銀系配位高分子の中から新たに3,5-pyridinecarbioxylic acidおよび4,4'-bpyを配位子にもつAgの配位高分子(Ag-pydc、Ag-4,4'bpy)に形状誘導効果が確認された。これら配位高分子の官能基はそれぞれ、カルボキシル基、ピリジンであり、配位高分子結晶が有する形状誘導効果は官能基の種類により決定するのではなく結晶構造に由来することを強く示唆する結果である。引き続き、形状誘導効果を持つ配位高分子のライブラリ化および数学的分類を目指し研究を進める。
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