前年度に引き続きCO2固定経路の導入と改良を行った。ホスホエノールピルビン酸からオキサロ酢酸に流れる経路を強化することで、増殖能を向上させることができた。また、プロモータの改変およびフィードバック阻害変異を導入することで、野生株における発現量を強化するための基本技術を構築した。特に、ゲノム編集技術を用いて数塩基の変異を導入することでも発現量を増加させることができた。また、アセチルCoAを前駆体として生産されるメバロン酸およびそれらに由来する化合物の生産の検討を行った。こちらは上述の炭素取り込みの強化では生産量の向上がわずかであったが、異なる炭素固定経路を持つグリオキシル回路に着目した。このグリオキシル酸経路は、通常のTCA回路をショートカットする経路であり、CO2が排出されないという特長がある。このグリオキシル酸回路を強化、および欠損した変異体においては、増殖がよくなるものの物質生産に与える影響はそれほど大きくなかった。そこで、さらに上流の経路に着目し、解糖系上流の遺伝子について破壊を行った。通常考えられるペントースリン酸経路への流れを抑制する方法ではあまり効果が見られなかったが、解糖系の本流であるホスホフルクトキナーゼの欠損が大きく影響していることを新たに見出した。しかし、このホスホフルクトキナーゼの欠損は大きく増殖に影響する。そこで、より活性の弱い方を欠損させることで、その生産量を向上させることができた。上述のプロモーター改変のアプローチと組み合わせてCO2排出を抑えた微生物株の構築の基礎となることが期待される。
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