研究課題/領域番号 |
19K22085
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 工学研究科, 教授 (20201642)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 多孔質膜 / 気体分離 / 炭化ケイ素 / ポリカルボシラン / ポリチタノカルボシラン / 浸透気化 |
研究実績の概要 |
多孔質シリカ分離膜は1nm以下のサブナノ細孔径の精密制御と薄膜製膜により,極めて高い分離特性と透過性を両立させることが可能であり,これまでに水素分離,二酸化炭素分離,さらには有機ガス分離に有効であることを明らかにされてる。さらに,乾燥ガス中では,極めて高い安定性を示し,長期間にわたって気体透過率は変化せず,高い選択透過性を維持する。しかしながら,湿りガス中では透過率は大幅に低下し,再び乾燥雰囲気に戻しても膜透過性は不可逆的に変化してしまうことが知られている。 そこで本研究では,(1) 水熱安定性に優れたサブナノ多孔膜,特に非酸化物セラミックスとして炭化ケイ素系材料膜を開発し,(2) 水熱安定性の評価と劣化機構の解明,さらには(3) 各種の分離系および条件での分離特性を明らかとすること,を研究目的とする。 2019年度においては,特に(1)に注力し,炭化ケイ素前駆体であるポリカルボシラン(PCS)およびチタンが導入されたポリチタノカルボシラン(TiPCS)をセラミック前駆体ポリマーとして用い,その焼成過程を200℃~1000℃において,XRD,FTIR,TG/TG-MASS,SEM/EDSにより詳細に検討した。さらに,αアルミナ支持体上に炭化ケイ素系前駆体ポリマーをコーティング製膜することで,PCSおよびTiPCS由来の炭化ケイ素系多孔質膜の創製に成功した。さらに,気体(H2/C3H8,N2/SF6など)及び浸透気化分離(MeOH/トルエンなど)へと応用し,高い分離性能を示すことを明らかとした。例えば,H2透過率>1x10-6 mol/(m2 s Pa), H2/C3H8透過率比>1000のPCS系膜,さらにはN2透過率>1x10-7 mol/(m2 s Pa), N2/SF6透過率比>1000のTiPCS系膜など,極めて高い選択透過性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
炭化ケイ素前駆体であるポリカルボシラン(PCS)およびチタンを導入されたポリチタノカルボシラン(TiPCS)をセラミック前駆体ポリマーとして用い,その焼成過程を200℃~1000℃において,XRD,FTIR,TG/TG-MASS,SEM/EDS,窒素/CO2吸着により詳細にモニタリングした。さらに,αアルミナ支持体上にPCSおよびTiPCSをコーティング・焼成することで,炭化ケイ素系多孔質膜の創製に成功した。酸素前処理が,PCSおよびTiPCS系の両方において,細孔径制御に有効であることを見出し,その前処理条件を最適化することで極めて高性能な炭化ケイ素系分離膜の開発に成功した。例えば,H2透過率>1x10-6 mol/(m2 s Pa), H2/C3H8透過率比>1000のPCS系膜,さらにはN2透過率>1x10-7 mol/(m2 s Pa), N2/SF6透過率比>1000のTiPCS系膜など,高い選択透過性を示した。さらに浸透気化分離(MeOH/トルエンなど)でも高い選択透過性を示した。各種の分離系において,既往の報告データと比較したところ,選択性vs.透過性のトレードオフ上あるいはトレードオフを越えていることが明らかとなった。本研究で開発したSiC系膜の優れた透過特性が明らかとなったことから,十分な進捗状況であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,(1) 水熱安定性に優れたサブナノ多孔膜,特に非酸化物セラミックスとして炭化ケイ素系材料膜を開発し,(2) 水熱安定性の評価と劣化機構の解明,さらには(3) 各種の分離系および条件での分離特性を明らかとする。 特に,(1)製膜法に関しては,より詳細に製膜条件を検討することで,H2/N2分離での高性能化を図る。(2)水熱安定性に関しては,100℃~500℃のおいて,水蒸気と水素あるいは窒素との混合ガスでの分離特性評価をおこない,膜安定性ととともに分離特性評価を行う。(3)に関しては,各種製膜条件で作製した分離膜を用いて気相系および液相系での特性評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は,SiCセラミック前駆体ポリマーの入手に時間がかかり,研究開始が遅れてしまった。 2020年度は,前駆体を各種を早めに確保するとともに,SiC系材料の調製に必要な高温炉の購入を予定している。
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