メタマテリアルは金属サブ波長構造を単位素子とした人工光学材料である。誘電体ナノギャップを隔て積層されたナノパターン構造体で構成される積層メタマテリアルは、ナノギャップ空間に局在するフォトンモードに応答して特定周波数で強い光学共鳴応答を示す。また、ナノギャップのわずかな違いで局在フォトンモードが大きく異なるため、ナノギャップ層(通常はSiO2などの透明絶縁体が使われる)の厚みに応じて光学特性を調整できる。本研究では、誘電体ナノギャップを“気体(空気)”としたナノギャップ可変の積層メタマテリアルで構成され、環境変化に応答し環境のエネルギーを利用してメタマテリアル自らパッシブに構造変形し、適切な光学特性に調整可能な熱環境応答型スマートメタマテリアルの提唱と熱スペクトル制御の実証研究を行う。 本年度は、昨年度に設計・製作手法を確立した熱環境応答型スマートメタマテリアルのナノパターン構造、及び誘電体薄膜を密着させることでスペクトル制御が可能であるという知見を元に、温度変化に応じて繰り返し動作切り替え可能なデバイスの実証を試みた。まず、バイメタルを用いて誘電体薄膜を上下動作可能なフレームを製作し、ナノパターン構造を形成した基板と組み合わせた。顕微観察及び分光測定により、外気の温度変化に伴いバイメタルが変形、誘電体薄膜(SiO2)がナノパターン構造に接触し、透過スペクトルに変化が生じることを確認した。バイメタルの変形は可逆的であり、温度の上下に応じて繰り返しスペクトル変化が得られた。続いて、バイメタルをナノパターン構造上にマイクロマシニングにより形成することを目指した。バイメタルの材質はAl・SiNとした。動作検証までは至らなかったものの、SEM観察より構造を確認し、マイクロマシニングによるナノパターン・バイメタル一体構造の作製指針を得た。
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