本年度は、前年度に開発を行った四重極質量分析計(QMS)搭載反応科学超高圧電子顕微鏡(RSHVTEM)システムにガスクロマトグラフィー(GC)を追加し,発生しているガス種の正確な同定および定量可能なシステムにまで発展させた.この新システムでPd微粒子担持カーボンナノチューブの酸素中燃焼実験を行い、GCの動作確認を行った.しかしGCへの引き込みラインが細いチューブになるため、GC経由の測定は今までより検出感度が落ちてしまうことが分かった.そこでQMS-GCーRSHVEMの接続ラインの見直し及び改良の検討中である. また前年度高温(500-600℃)でのZrO2担持Rh微粒子のNO還元触媒反応の定常状態において,一旦触媒活性が低下することが見いだされ、実際の触媒反応は低温側と高温側で二つのモードが存在することが示唆されている.そのため低温側でも原子レベル観察の記録動画の解析を進め,低温側では表面酸化膜上での吸着からNO還元が生じており、高温側では金属表面が露出してNOを吸着・還元していることが明らかになりつつあり、放射光による表面酸化状態の平均情報から化学反応速度論方程式によってこの二段反応の定量化を行った. さらに新たな触媒開発のために,構造変化の触媒粒子の平均粒径依存性および添加元素効果(金およびパラジウム添加)を並行して調査した.その結果、粒径が小さい場合は、粒子全体が高温で酸化物と金属状態を数秒の間隔で繰り返す構造変化を示すことが分かったが、基本的には表面反応で進む大きい粒子と触媒反応機構が同様であることが明らかになった。また添加元素による特性の違いは、マクロな特性試験の結果と比較して今のところ明確な再現性が得られておらず、今後の課題となった。
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