研究課題/領域番号 |
19K22103
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田川 美穂 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (40512330)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
|
キーワード | DNA / 自己集合 / コロイド結晶成長 / X線小角散乱 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
本研究では、タンパク分子を封入して規則配列させるためのDNA結晶スポンジ(DNA規則的多孔構造)をデザインし、作製している。具体的には、配列設計した合成DNAを表面に結合したナノ粒子(DNA修飾ナノ粒子:DNA-NP)を結晶化することにより、DNA-NP超格子結晶を作製している。DNA-NPもコロイド粒子の一種であるが、一般にコロイド粒子は最密構造を取りやすく、粒子体積率の低い結晶構造や、空孔の多い結晶を作製するのは難しい。本年度は、下記の項目を重点的に推進した: [1]空孔が多く格子定数の大きいDNA-NP超格子結晶を作製するためには、DNAの配列設計のみならず、結晶化の際の溶媒の組成の最適化が必要であることがわかった。本年度は、結晶化の際の緩衝液の種類、イオン濃度等の条件を最適化することにより、格子定数が大きくても結晶性の良いDNA-NP超格子結晶を作製することに成功した。 [2]ゲスト分子を効率的に封入する条件を模索した。DNA-NP超格子結晶内に、目的のゲスト分子と相互作用する部位を設けることで、ゲスト分子を混合するだけで取り込むことに成功した。 [3]ナノ粒子表面に結合するDNAの本数は、これまで詳細が明らになっていなかった。ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動により、ナノ粒子表面に結合したDNAの本数の定量解析をした。その結果、同じ粒径の金ナノ粒子に結合させた場合においても、DNAの鎖長や配列により、結合本数が異なることがわかった。結合本数の正確な把握は、結晶成長条件を最適なする際に、結合力等の見積もりに必要である。 [4]超解像顕微鏡を用い、封入したゲスト分子を蛍光で観察する方法を確立した。蛍光色素の種類により結晶内部からの蛍光強度が異なることを発見した。蛍光色素の種類により発光波長が異なるため、波長によってはナノ粒子に吸収されやすいためと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非常に厳しい状況の中、計画変更せざるを得ない部分があったにも関わらず、成果をあげられたため。厳しい状況とは、主に下記の3点である: 1.covid-19蔓延により、外部施設における実験が制限された。また、我々研究室でも感染者の発生により複数回立ち入り禁止となった。 2.世界的なプラスチック不足、及びDNA実験関係の消耗品がcovid-19検査のために消費され、長期的に手に入らず、代用品で実験をするほか方法がなかった。 3.保育園の休園や小学校の学級閉鎖が相次ぎ、研究参画者らが出勤できない日が多かった。
|
今後の研究の推進方策 |
ゲスト分子封入の更なる高効率化と、超解像顕微鏡を用いたゲスト分子封入の確認方法及び封入量をある程度定量できる手法の開発を進める。具体的な項目は下記の通りである: [1]ナノ粒子表面に、粒子間結合用のDNAと、粒子の融合を防ぐバッファーとしての役割のDNAと、二種のDNAを結合する方法を確立する。これにより、結晶内にゲスト分子封入のための空孔を積極的に設ける。 [2]結晶化条件をさらに精査し、結晶性の向上を目指す。 [3]超解像顕微鏡による結晶及び封入したゲスト分子の観察において、蛍光波長の選択による内部由来の蛍光強度のちがいを精査し、内部封入分子の定量解析を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Covind-19蔓延による共通施設使用制限及び、プラスチック不足・DNA実験関連消耗品不足により、実験計画を変更せざるを得なかった。代替品を使用するなどして実験を進めているが、目的の実験用具を購入できなかったために、次年度使用額が生じた。
|