研究課題/領域番号 |
19K22103
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田川 美穂 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (40512330)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | DNA / コロイド結晶成長 / X線小角散乱 / 自己集合 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
本研究では、タンパク分子を簡便に規則配列させるためのDNA結晶スポンジ(DNA規則的多孔構造)をデザインし、作製している。昨年に引き続き、DNA修飾ナノ粒子結晶を用いて、スポンジ機能を持つ結晶作製に取り組んだ。タンパク分子などのゲスト分子の取り込み効率を向上させるため、格子定数が大きい結晶作製にこれまで取り組んできたが、2022年度はDNA配列及び結晶化溶液の組成等の結晶成長条件を最適化することにより、結晶内のタンパク分子取り込みサイト(空隙)の大きさを約73nm程度まで大きくすることに成功した。 また、封入したい分子と相互作用を持つ部位を予め結晶内に導入しておくことで、溶液内で混合するだけでゲスト分子を取り込めることを示した。具体的には、予めビオチン分子を修飾した合成DNAを用いてDNAナノ粒子結晶を作製することで、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用により、ストレプトアビジン分子を封入することに成功した。その他、作製した結晶に細胞内でゲノム編集を行うCas9タンパクを封入することにも成功した。 DNAナノ粒子結晶を高品質に作製するためには、混合する分子の当量比が非常に重要であるが、DNA低吸着チューブやチップ等、DNA実験関連の消耗品の欠品が長期にわたり発生しており、代替品を使用しなければならない状況であったが、実験手法を工夫することにより成果をあげ、論文発表(Soft Matter, 18, 6954-6964, 2022)も行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA実験関連の消耗品の欠品が長期にわたり続いており、代替品を利用する他方法がなかったが、実験プロトコルの変更及び研究計画の変更等により柔軟に対応し、成果をあげられたため。
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今後の研究の推進方策 |
DNAナノ粒子結晶と封入したいゲスト分子間に様々な相互作用を持たせることで、様々な分子を封入できることを示してきた。今後は、結晶サイズが決まればゲスト分子封入のための空隙の数も決まるという結晶の特性を生かし、封入分子の分子量を見積もることができる技術を目指す。更に、オイルの中に生成した結晶化溶液の液滴内で結晶化を行うことで、結晶サイズを制御することに取り組む。ゲスト分子の封入効率を上げて、更に結晶サイズの制御も可能となれば、封入分子の分子量もより正確に見積もることができるようになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験消耗品類に関しては、納期未定の物品が多く、発注から一年以上経っても納品されないものが多かった。実験は、研究室に既にあった代替品により行ったため、次年度使用額が生じた。申請時に予定していた実験消耗品は未だに納期未定で今後も入手できない可能性が高いため、実験プロトコルを変更して研究を遂行する予定である。それにより、当初予定していなかった予備実験が必要となり、必要な試薬類も増えるため、それらに予算を充てる。
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