研究課題
原子数個の厚みを有する2次元ナノシートは、高電子・イオン移動度、柔軟性、透明性、高耐熱等など、従来のバルク材料・薄膜とは異なる機能の発現が期待され、次世代のエレクトロニクス分野での応用が期待されている。しかしながら、従来の合成では、層状化合物の剥離というトップダウン手法が利用されており、多彩な機能を有し、応用上重要である非層状無機化合物には適用できず、得られる材料、機能は限定されていた。本研究では、超伝導性、強誘電性、磁性など機能の宝庫と言える酸化物をターゲットに、2次元酸化物ナノシートのボトムアップ合成に挑戦している。本年度は、以下の2課題を推進した。(課題1)第一原理計算のよる酸化物ナノシートの構造評価と材料設計:ナノシートでは、表面構造緩和により従来のバルク材料とは異なる結晶構造が誘起されるため、構造安定性の評価は、合成条件の検討や物性制御に関わる重要な因子となる。本年度は、自発分極、極性を有する酸化物(ZnO, BaTiO3など)対象に、第一原理計算により層数変化に伴う結晶構造の安定性や電子バンド構造の影響について検討を行った。特徴的な変化は、分極を有するZnOで確認され、層数制御により特異な構造安定性を示し、グラフェンに類似した平面状ハニカム構造が安定となることが明らかとなった。(課題2)2次元ナノ界面鋳型合成法によるナノシートのボトムアップ合成:TiO2、ZnOなどの単純酸化物については、最近開発した界面活性剤を利用したテンプレートによる鋳型合成法により、気-液界面でのナノシートの完全合成を試みた。その結果、結晶の対称性、晶癖に由来した形状を付与することができ、サイズ、形状を精密に制御したTiO2、ZnOの合成に成功した。他方、BaTiO3については、TiO2ナノシートをテンプレートとした鋳型合成法により、横サイズ、形状を維持したナノシートの合成に成功した。
2: おおむね順調に進展している
研究当初予定していたTiO2, ZnO, BaTiO3のボトムアップ合成に成功し、2次元ナノ界面鋳型合成法の有効性を確認することができた。また、第一原理計算による構造評価と材料設計、ナノシートの特性評価など、当初計画以上に進展した課題もあった。
合成したナノシートに対して、各種構造解析、特性評価を行う。さらに、本研究で開発した2次元ナノ界面鋳型合成法を他の非層状酸化物系の合成にも拡張し、ボトムアップ合成を汎用的な技術として確立する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 12件、 招待講演 12件)
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