研究課題/領域番号 |
19K22108
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
筒井 真楠 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50546596)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ナノポア / ナノ流体 / イオン電流 / 1粒子検出 / 1粒子ダイナミクス |
研究実績の概要 |
本研究では、マルチポアとポリイミド被覆ナノポアを融合した新規ナノ構造を用いて、ナノポア法を基盤とする1細胞内物質の1粒子検出法を創成することを目的としている。本年度では、まずマルチポアの直下にナノポアを配置させた積層集積ナノポアを創製した。窒化シリコン薄膜で表面が覆われたシリコンウエハを基板とし、化学気相蒸着法、電子線リソグラフィーおよび反応性イオンエッチングにより、ナノポアを加工したメンブレン上にポリイミドマイクロポア層並びにマルチポアが作られた二酸化珪素層を積層させた。この積層集積ナノポアを用いて、粒子径の異なるナノ粒子の1粒子検出を試みた。マイクロポアとナノポアはどちらも直径300nmとし、検出対象として直径900nmおよび100nmのカルボキシル基修飾ポリスチレンナノ粒子を選んだ。900nmの粒子を含んだ燐酸緩衝液中でナノポアを通るイオン電流を計測したところ、ナノポアは当該粒子によってブロックされることなく、測定が継続できた。これは、当該粒子より小さいマルチポアによって、粒子のフィルタリングが成されたことを示している。一方、900nmの粒子と100nmの粒子を同時に計測したところ、100nmの粒子はマルチポアを通過し、ナノポア部で検出された。以上の結果から、積層集積ナノポアが、フィルタ機能を備えた1粒子センサとして用いることが可能であることを確認した。さらに、今度は100nmサイズの積層集積ナノポアを用いて、細胞の測定を実施した。ナノポアに印加する電圧をある程度高くすると、ナノポア部で推定数十ナノメートルの大きさの物質が多数検出された。これば、印加電圧により細胞がマルチポア部で集中する電場によって損傷を受け、内部物質が漏れ出し、ナノポアを通過したことを示唆している。以上の通り、積層集積ナノポアの創製並びにその動作実証に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
積層集積ナノポアの動作実証だけでなく、次年度に計画していた1細胞トラップ並びに膜破壊の確認まで、一部すでに遂行することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗は順調であり、次年度は細胞膜破壊に要する電場強度など、詳細なメカニズムの検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、すでに積層集積ナノポア構造を用いたイオン電流の時系列データが得られるようになったが、今後計測を継続していくと、予想より膨大な容量のデータとなる可能性が浮上した。そこで、翌年度には、当該助成金を用いてデータ記録用のHDDならびにデータ解析用ワークステーションを購入し、大容量データを効率的に処理する解析基盤を早期に構築する計画である。
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