研究課題/領域番号 |
19K22109
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
VERMA Prabhat 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60362662)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | プラズモン / 吸収スペクトル / 金属イオン / センシング |
研究実績の概要 |
本研究は、プラズモン超集束を用いて高感度かつ広帯域な金属イオンセンシング技術を開発することを目的として、下記の研究を実施した。 1. 電磁場シミュレーションを用いて、プラズモン超集束の広帯域生を検証した。金、銀、アルミニウムなどを用いて、可視光域から近赤外光域にわたる広帯域生を確認した。特に短波長側ではアルミニウムが有効であることを見出した。また、実際にそれぞれの金属を用いてテーパー構造を作製し、実験的にも広帯域生が得られることを確認した。 2. 吸収現象は金属テーパー構造表面全域で起こるため、テーパー構造の先端でのみ試料の吸収が起こるよう、テーパー先端に検出口を作製した。テーパー構造全体をポリマー薄膜でコートし、集束イオンビームでテーパー先端付近を削り加工することによって、検出口を作製した。検出口の有無でコントロール実験を実施し、検出口が機能していること、テーパー構造の先端で起きた吸収のみを検出できていることを確認した。 3. 色素分子を用いて、センシング装置として機能していることを確認した。白色光を用いてプラズモン超集束を励起し、テーパー先端で生成する局在電場からの散乱光を分光検出した。特定の吸収波長を有する色素分子を装置に滴下し、色素分子を吸収センシングできることを確認した。さらに異なる吸収波長を持つ複数種の色素分子を同時に滴下し、広帯域生を活かして全てを同時検出することにも成功した。検出感度も検証し、いくつか改良点を見出した。 4. 実際の金属イオンのセンシングにも取り組んだ。銅イオンの検出を試み、一定の成果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、まずプラズモン超集束現象の広帯域性を網羅的に検証し、本技術に最適な条件を見出すことを計画していた。想定より順調に電磁場シミュレーション及び検証実験を遂行することができ、プラズモン超集束の広帯域特性を解明することができた。そこで、次年度に予定していた、実際に吸収センシング装置を開発する所まで取り組むことができた。いくつか見えてきた課題はあるものの、検出口の作製など首尾よくデバイス開発を前進させることができ、色素分子を用いた吸収センシングにも成功しているため、当初の計画以上に進展させることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、まず開発したセンシングデバイスが金属イオンを検出可能であることを実験実証する。引き続き銅イオンを試料として金属イオン検出に取り組む。金属イオンセンシングが実現できれば、その検出感度や特異性など装置特性を評価する。特に検出感度については、装置の機械的なドリフトが感度を低下させる要因となっていることが判明した。ドリフトを抑えるための高安定ステージの導入や、よりアクティブにドリフトを補正する機構を導入することによって、検出感度の向上につなげる。 また、滴下する溶液の溶媒によっては、検出口を作製するために塗布した薄膜ポリマーが溶けてしまうことが分かった。スパッタリングを用いて、より化学的に安定なSiO2薄膜でコートするなど、より汎用性の高い検出口作製方法を模索する。 これらが問題なく遂行できれば、より実用的なデバイス化の可能性も検討する。現状、研究室環境でしか実施できない非常に煩雑で大型の構成になっている。小型かつ簡便に金属イオンの高感度検出ができるようなモジュール化の可能性を模索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主に、予定していた学会発表が、昨今の状況により中止になったため。来年度、より勢力的に学会参加し、得られた成果を発表する予定である。
|