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2020 年度 実施状況報告書

量子構造の急峻電子状態と良伝導電子状態の混成に基づく熱電性能向上方法論の創成

研究課題

研究課題/領域番号 19K22110
研究機関大阪大学

研究代表者

中村 芳明  大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60345105)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワード熱電材料 / 透明材料 / ナノワイヤ / ナノ構造物理 / 量子閉じ込め構造
研究実績の概要

本研究では、人工的急峻電子状態を有する量子閉じ込めナノ構造を、良電子伝導を担うナノワイヤの側面に形成することで、良伝導電子状態と高ゼーベック係数をもたらす急峻電子状態の混成状態を誘起し、本来不可能である高電気伝導率と高ゼーベック係数を同時実現し、本学理に基づく熱電性能向上方法論を創成することを目的としている。昨年、ZnOナノワイヤにSnO2/Ge膜を形成する予定であった。そこで、まず、ZnOナノワイヤにSnO2を堆積させたところ、SnO2はlayer-by-layer成長せず、アイランド成長することが本挑戦で初めて分かった。そこで、急遽ZnO/MgxZn1-xO界面に注目することにした。すなわち、ZnOナノワイヤにMgxZn1-xOの障壁を形成し、その際界面に生じる二次元チャネルをGe層の代わりに使うという戦略にかじを切った。そこで、まず最初にナノワイヤではなく、平坦なZnO薄膜場への平坦なMgxZn1-xO薄膜の形成条件を見出し、この条件を用いてZnO/MgxZn1-xOの超格子を形成することに成功した。
本年度は、ZnOナノワイヤー上にMgxZn1-xOを形成する技術開発を行う。また、本構造による熱電物性の制御を行うにあたり、基準の特性となるZnO/MgxZn1-xOの超格子の熱電特性を調べた。その結果、超格子の出力因子が薄膜のそれと比べて、二倍増大していることが明らかとなった(キャリア密度3×10^19cm-3の時)。まだナノワイヤを用いていない段階である熱電性能の向上が観測されたことから、ナノワイヤを作製することで、より大きな熱電物性の向上・制御が期待できる。さらに本年度は、ZnOナノワイヤーに上へのMgxZn1-xO膜の形成条件を探索した。その結果、平坦な薄膜をワイヤー上に形成することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究はおおむね順調に進行していると評価する。昨年、ZnOナノワイヤ上のSnO2/Ge形成の予定から、MgxZn1-xO/ZnO界面の形成にかじを切った。その計画変更の必要性があったが、昨年すぐにMgxZn1-xO/ZnO超格子の形成に成功したおかげで、本年度は熱電物性制御の基準となるMgxZn1-xO/ZnO超格子の熱電特性評価に早急に取り掛かることができた。その結果、薄膜に比べて熱電出力の向上を見出している。また、ナノワイヤーへの展開としてZnOナノワイヤにMgxZn1-xO膜の形成に成功している。以上より、当初予定していた材料の変更を余儀なくされたものの、本戦略に則った適切な構造形成の技術開発、及び熱電性能向上の傍証を得ること成功しており、十分評価(おおむね順調)に値するものである。

今後の研究の推進方策

昨年度開発したMgxZn1-xO/ZnOの超格子構造を使って、本年度その熱電特性を評価し、構造による熱電性能制御の知見を得ることに成功した。これは、本戦略“良伝導電子状態と高ゼーベック係数をもたらす急峻電子状態の混成状態”の実現の可能性を示唆するものである。さらに本年度は、ZnOナノワイヤーにMgxZn1-xOを形成することに成功している。そのため、来年度は、この知見をもとにMgxZn1-xO/ZnOナノワイヤー形成技術を確立し、その熱電物性を測定して、理論的な考察と比較することで構造による性能向上の実証を行う。それと同時に、ZnO系薄膜の熱電デバイスの作製に挑戦する予定である。このような方策で、最終年度には、MgxZn1-xO/ZnOの熱電物性と理論的解釈を照らし合わせて構造制御による性能向上の物理を明らかにし、さらに熱電薄膜のデバイスを作製する。

次年度使用額が生じた理由

当初、ZnOナノワイヤにSnO2/Ge膜を成膜することを予定していたものの形成様式による不具合が見つかった。しかし、MgxZn1-xOとZnO界面構造に注目することで当初の目的を達せすべき研究が滞りなく進むと考えて、その方向に舵を切った。そのためまず、ZnO薄膜上にMgZnOを形成する技術を昨年度開発し、今年はナノワイヤ上に形成するという手順を踏むこととなった。今年は、予想以上効率的にナノワイヤ上へのMgxZn1-xO膜の形成に成功し、予算の余裕ができた。しかし、形成に成功したものの形成手法の確立にはいたっておらず、その残予算を、来年度ナノワイヤの形成手法開発に、充てて研究を進める計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Impact of metal silicide nanocrystals on the resistance ratio in resistive switching of epitaxial Fe3O4 films on Si substrates2020

    • 著者名/発表者名
      Ishibe Takafumi、Uematsu Yuto、Naruse Nobuyasu、Mera Yutaka、Nakamura Yoshiaki
    • 雑誌名

      Applied Physics Letters

      巻: 116 ページ: 181601~181601

    • DOI

      10.1063/1.5143960

    • 査読あり
  • [雑誌論文] High Thermoelectric Power Factor Realization in Si-Rich SiGe/Si Superlattices by Super-Controlled Interfaces2020

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi Tatsuhiko、Ishibe Takafumi、Naruse Nobuyasu、Mera Yutaka、Alam Md. Mahfuz、Sawano Kentarou、Nakamura Yoshiaki
    • 雑誌名

      ACS Applied Materials & Interfaces

      巻: 12 ページ: 25428~25434

    • DOI

      10.1021/acsami.0c04982

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An advanced 2ω method enabling thermal conductivity measurement for various sample thicknesses: From thin films to bulk materials2020

    • 著者名/発表者名
      Mitarai Kosuke、Okuhata Ryo、Chikada Jinichiro、Kaneko Tatsuya、Uematsu Yuto、Komatsubara Yuki、Ishibe Takafumi、Nakamura Yoshiaki
    • 雑誌名

      Journal of Applied Physics

      巻: 128 ページ: 015102~015102

    • DOI

      10.1063/5.0007302

    • 査読あり
  • [学会発表] 界面制御した透明ZnO薄膜における熱電出力因子増大2020

    • 著者名/発表者名
      石部 貴史
    • 学会等名
      2020年 第81回 応用物理学会秋季学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 界面エネルギー障壁制御による透明ZnO/MgZnO超格子薄膜の出力因子増大2020

    • 著者名/発表者名
      小松原 祐樹
    • 学会等名
      第17回日本熱電学会学術講演会(TSJ2020)

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公開日: 2021-12-27  

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