i) シリコン量子ドットの塗布により水素生成光電極を形成しその特性を評価した.今年度は特に,シリコン量子ドットのサイズと光電流の関係について詳細に調べた.サイズが非常に小さい場合(<4nm)は,シリコン量子ドットの自己酸化によるアノード電流が観測された.一方,サイズが4nm以上になるとプロトンの還元電流が観測され,あるサイズ以上のシリコン量子ドットから形成された薄膜が水素生成光電極として機能することを実証した.得られた結果を論文にまとめNanotechnology誌に発表した. ii) シリコン量子ドット薄膜にプラチナナノ粒子やグラフェンナノ粒子を付加することによる特性の向上を試みた.シリコン量子ドット光電極表面にプラチナナノ粒子の溶液を塗布することにより,電極特性が安定することを見出した.一方,すべての試みにおいて,光電流の大きさに顕著な向上は見られなかった. iii) ホウ素とリンを同時ドーピングしたシリコン量子ドットの溶液の塗布により作製した薄膜のバンドギャップ以下の領域における光電流特性を詳細に調べた.その結果,バンドギャップ以下の領域で顕著な光電流が観測された.また,光電流スペクトルに強いサイズ依存性があることがわかった.光電流は不純物ドーピングにより形成された準位間の遷移による光吸収に起因していると考えられ,得られたデータは過去のフォトルミネッセンスのデータと定性的に一致している. iv) ホウ素とリンを同時ドーピングしたシリコン量子ドットの塗布により作製した薄膜がリチウムイオン電池のアノードとして機能するかどうか検証した.その結果,膜が薄い場合は安定した充放電特性を示すことが明らかになった.
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