研究課題/領域番号 |
19K22112
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
荒谷 直樹 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60372562)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 有機化学 / 複合材料 / ナノカーボン / 曲面π電子系 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでPAHに対する置換基導入による機能化に取り組んでいる。すでに①難溶性オリゴリレンの直接ホウ素化およびそのカップリング反応による誘導体化、②[70]フラーレンに対する二重付加反応による分子構造のキラル化およびキロプティカル特性化を通じて、平面状および球状π電子系への置換基導入による機能化を達成した。いずれも母骨格は代表的な難溶性PAHであるが、今後の大発展への足掛かりとなる成果である。特に、その難溶性からこれまで基質として扱われることのなかったテリレン、クアテリレンを溶けないまま直接ホウ素化することで可溶化・官能基化することは今までにない、独創的なアイデアである。三つ以上のナフタレンユニットをもつオリゴリレンは、その初合成から50年以上経つにもかかわらず、合成の困難性および極端に低い溶解度のために、これまでほとんど研究されていない。難溶性テリレンおよびクアテリレンに対して直接置換基を導入する反応は現在までに例が無く、すなわち後修飾による誘導体化は未報告である。そのため置換基の導入は、通常リレン骨格を生成する前に行う必要があるが、オリゴリレン骨格合成時の過酷な条件に耐えなければならないため、その種類は非常に限定されている。そこで本研究では、反応の位置選択性、溶解性、応用性を鑑みて、Ir触媒による直接ホウ素化反応を用い、難溶性テリレンおよびクアテリレンの可溶性誘導体化に挑戦し、高選択・高収率で四置換体を得た。さらに、テトラホウ素化テリレンTB4とメシチレンとのSuzuki-Miyauraクロスカップリング反応に成功し、ホウ素化オリゴリレンの合成中間体としての有用性を実証した。この結果は、種々の機能性オリゴリレン誘導体への非常に有望な経路を提供する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三つ以上のナフタレンユニットをもつオリゴリレンは、その初合成から50年以上経つにもかかわらず、合成の困難性および極端に低い溶解度のために、これまでほとんど研究されていない。難溶性テリレンおよびクアテリレンに対して直接置換基を導入する反応は現在までに例が無く、すなわち後修飾による誘導体化は未報告である。そのため置換基の導入は、通常リレン骨格を生成する前に行う必要があるが、オリゴリレン骨格合成時の過酷な条件に耐えなければならないため、その種類は非常に限定されている。そこで本研究では、反応の位置選択性、溶解性、応用性を鑑みて、Ir触媒による直接ホウ素化反応を用い、難溶性テリレンおよびクアテリレンの可溶性誘導体化に挑戦し、高選択・高収率で四置換体を得た。さらに、テトラホウ素化テリレンTB4とメシチレンとのSuzuki-Miyauraクロスカップリング反応に成功し、ホウ素化オリゴリレンの合成中間体としての有用性を実証した。この結果は、種々の機能性オリゴリレン誘導体への非常に有望な経路を提供する。
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今後の研究の推進方策 |
ベンゼン環から平面型ナノグラフェンをボトムアップ的に合成することが盛んに研究されている。一方で、ヘテロ元素を導入するなどで曲面をもたせたグラフェン型分子は特異な物性が得られることが徐々に明らかにされ、ホットな研究領域になりつつある。本研究では、炭素シートを曲げることで溶解性が向上することに着目する。効果的に5員環を導入することで曲面と電子受容性を同時に獲得する戦略に基づき、ボウル型分子であるコラニュレンの縮環多量体の合成により、新規有機n型半導体化合物群を開発する。 具体的には、鈴木-宮浦クロスカップリングとそれに続く酸化的縮環反応を利用してこれを繰り返すことにより、炭素原子20個からなる曲面をもつコラニュレン同士を縮環してボウル構造を複数有する分子性グラフェンを合成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響による学会参加の中止、国際会議の中止、2020年3月以降の実質的な研究活動の中止による消耗品・備品の未発注などにより予定予算を消費しなかった。2020年度の研究活動再開と同時に実験の準備として消耗品の購入に充て、これらの予算は消化される。
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