本年度は主に、(1)キラルAuナノワイヤー (AuNWs)合成の拡張、(2) 有機色素を被覆したキラルAuNWsの光学特性評価、(3) テンプレートを用いないAuNWsの合成法の確立について挑戦した。 (1) キラルAuNWsは両親媒性化合物(C18AA)とキラル源のHSAから構成されるらせん状ナノファイバーをテンプレートとして合成するが、キラルナノワイヤーの合成をさらに発展させるために、C18AAの鎖長を変えたC14AAおよびC16AAを合成してAuNWsを作製した。その結果、AuNWsのピッチなどのNWs構造は鎖長にはほとんど依存しないことがわかった。さらにHASのD体とL体の混合比を変えてAuNWsを合成したところ、AuNWsのらせん構造はD体とL体の混合比に大きく依存することが明らかとなった。例えば、混合比が1:1の場合には直線状のAuNWsが得られ、1:2~3では大きなピッチのキラルAuNWsが生成した。 (2) キラルAuNWsに末端チオール基を持つ化合物を被覆させてCDスペクトルをしたところ、化合物由来のCDピークが観測された。すなわち、キラル転写に成功した。 (3) C18AAの水溶液にトルエンを可溶させた系で塩化金酸を還元すると、直線状の極細AuNWsが合成できることを見出した。また、トルエンをメチルシクロヘキサンに変えることによって、ジグザグ構造のAuNWsが得られることもわかった。すなわち、ソフトテンプレートを用いること無く、水溶液系でAuNWsが合成できることを実証した。さらに、本方法はAuとAgの合金NWsに適用できることも明らかとした。
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