研究課題/領域番号 |
19K22117
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小嗣 真人 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 准教授 (60397990)
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研究分担者 |
橋爪 洋一郎 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 講師 (50711610)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 機械学習 / デンドライト組織 / パーシステントホモロジー / フェーズフィールド法 |
研究実績の概要 |
電気自動車市場の急速な拡大を背景に、長寿命かつ安全な二次電池の実現は社会的、産業的な重要課題である。電極表面のデンドライト組織は複雑な形状を示すことから、これまでの組織解析ではショートの原因究明を行うことが困難であった。 そこで本研究では、最新の位相幾何学「パーシステントホモロジー(PH)」を活用することで、デンドライト組織形状に内在する特徴の抽出を行った。また機械学習と組み合わせることで、時間を遡って初期物性値を推定する枠組みを開発した。PHは構造データにおける形状、ゆらぎ、連結性を定量的に記述できる手法である。実験では純金属の凝固過程で形成されるデンドライト組織を対象に、PHを適用し組織画像からのパーシステンス図(PD)を作成した。また、機械学習では主成分分析(PCA)で次元削減し、PDと初期物性値の対応関係を教師無し学習にて調査した。 デンドライト組織はフェーズフィールド法を用いて、過冷却状態の凝固により生じる純Niの微細組織を計算した。種々の異方性パラメータと時系列データを生成し、入力データセットとした。その後HomCloudを用いてPH解析を行いPDを作成した。ベクトル化されたPDにPCAを適用することで、8256次元から2次元へ次元削減を行い、データの構造を可視化した。その結果、約0.1usec以降で、各異方性強度の値に応じて明確に情報分離できていることが分かった。なお、第2主成分までの累積寄与率は94.4%であり、PDの情報をほとんど損なうことなく特徴量抽出できていることがわかった。従って、PH解析はデンドライト組織の特徴抽出に有効であり、PCAとの組合わせによって物性値の推定が行えることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、二次電池電極表面に形成されるデンドライト組織を対象に、パーシステントホモロジーを用いて特徴抽出を行うと共に教師なし機械学習を用いて、構造情報のみから物性値を推定する手法を開発した。デンドライトはフラクタルの一種として特徴付けられ、構造の複雑さや初期値鋭敏性のため、機能劣化要因の逆解析は実験的にも理論的にも困難であった。 入力データはフェーズフィールド法を用い、純Niの過冷却状態の凝固により生じるデンドライト微細組織の空間分布および時間変化を計算した。計算では種々の異方性パラメータについて系統的に演算し、入力データセットを取得した。特徴抽出ではHomCloudを用いてPH解析し、PDを得た。小野子PDをベクトル化し、PCA解析を行うことで、高次元データを2次元に次元削減した。縮約されたPCAの散布図と元の異方性パラメータの関係を比較検討した結果、約0.1usec以降で、異方性強度の値に応じて明確に情報分離できていることが明らかとなった。さらに第二主成分までの累積寄与率を評価したところ94.4%の値をえることができ、PDの情報を殆ど失うことなく、特徴抽出できていることが明らかとなった。このことから、PH解析はデンドライト組織の特徴抽出に有用であり、PCAとの組合わせによって物性値の推定が実施できることを示すことができた。このことから概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では純金属の凝固過程にPH解析を適用しデンドライト組織の特徴抽出を実施した。その結果、形状に関わる初期物性値を推定する枠組みを構築することができた。今後は実験的に得られたデータへの拡張、また他の物理量推定への展開、さらにはデンドライト組織以外の微細構造への応用を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大に伴い、予定されていた国際会議への出張をとりやめ、その結果出張旅費が余剰となった。また同様の理由により、購入予定にしていた機械学習用のパソコンの入手が困難となり、次年度へ購入を持ち越すこととなった。
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