研究課題/領域番号 |
19K22121
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新宅 博文 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (80448050)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 1細胞 / RNA-sequencing / 電気泳動 / マイクロ流体 |
研究実績の概要 |
1細胞RNA-sequencingに実時間軸の概念を導入することを目指し,High-throughput single-cell integrated nuclear and cytoplasmic RNA-sequencing (HT-SINC-seq)の要素技術であるバーコード配列を有するマイクロビーズの開発に着手した.このマイクロビーズはカラーコードとDNAバーコードが対応したものであり,最終的に画像による検出と次世代シーケンス解析を接続することを可能にする.マイクロ流路を用いたwater-in-oilシステムを活用し,10-20 umの直径かつ分散の非常に小さなマイクロビーズの生産を達成した.カラーコードを付与する手順において材料の化学耐性に関する課題が生じたが,複数の試薬を検討して課題を解決できた.開発したマイクロビーズを用いて1細胞および精製RNAサンプルのRNA-sequencing解析を実施し,マイクロビーズ等が逆転写やポリメラーゼ連鎖反応に対して何ら悪影響を及ぼさないことを確認できた.また,カラーコードの読み出しを行う蛍光顕微鏡システムを構築し,画像解析による読み出しを試みた.蛍光顕微鏡システムは共焦点撮影を採用し空間解像度の向上を図った.当初計測のダイナミックレンジが不十分であるという課題が生じたが,撮影条件の最適化と画像解析アルゴリズムの改善により,最終的にフローサイトメーターと同様の蛍光計測を可能にした.今後,これらのビーズと電場を用いたRNA抽出法を融合し,HT- SINC-seq法の実現を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カラーコード数の組み合わせを活用することで特定できるマイクロビーズの種類を大幅に増大させる新しいアイデアを創出することができた.現在,このアイデアでどれほどの大規模化が可能かという点について,実験および解析により検討を行っている.この新規の方法の仕様が明らかになった段階で知財化を進めたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,開発したマイクロビーズと電場を用いたRNA抽出法を融合し,HT-SINC-seq法の実現を目指す.培養細胞および組織切片等を用いてHT-SINC-seq法の性能を検証する.その後ダイナミクス解析への応用を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に次世代シーケンス解析を計画して進めてきたが,予定時期直前に所内の共同利用設備の予約が埋まり,進めることが困難となった.また,新型コロナウイルスの影響により所外の装置を借りることも困難な状況となったため,年度が明けてからの実施とすることにした.解析するサンプルは既に完成しており,装置利用が可能になり次第,迅速に進められるため,研究課題の進捗そのものには影響は少ない.また,この期間を利用して手法の問題点を再点検し,課題解決の糸口を掴むことができた.
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