本研究では、一連の水素結合型モット絶縁体において、誘電率測定および磁化率測定を極低温まで行い、これらの物質物質群において、量子常誘電性と量子常磁性が共存した新しい量子液体状態が実現していることを明らかにした。本研究により見出されたプロトン自由度による量子スピン液体状態は、電荷や軌道といった電子自由度とも、乱れによる構造自由度とも異なる、いわば第三の自由度に基づく量子スピン液体状態である言える。これは新しい量子液体の発現機構として興味深く、その背後には、物質中で最も軽量なイオンであるプロトンの顕著な量子性およびプロトン-π電子間に働く相互作用が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
|