研究課題/領域番号 |
19K22126
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
岩田 太 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (30262794)
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研究分担者 |
牛木 辰男 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40184999)
早津 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40468898)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 走査型イオン伝導顕微鏡 / ナノバイオ / 表面形状計測 / 表面帯電分布 |
研究実績の概要 |
液中環境での材料表面や生体細胞膜の表面といった固液界面の活性場において発現する現象は界面上の電荷状態に直接的に関わっていることから,電荷分布の観察は,そこで生じる様々な機能や現象の解明に極めて有効である.本研究の目的は液中環境において試料表面の形状像と電荷分布像をナノスケールの分解能で可視化できるプローブ顕微鏡を開発することである.走査型イオン伝導顕微鏡(Scanning Ion Conductance Microscopy: SICM)をベースに複数開口を有するナノピペットプローブを用いた新奇なイオン電流検出法を開発することで実現する.2020年度は,前年度に構築したシステムの改良を進めることで,帯電分布を可視化できる手法を開発した.帯電状態の測定は構築したシステムにおいてイメージングが可能なように走査機構とプログラミングを行い,表面形状および電荷分布可視化の顕微計測に関する実証実験を行った.その後,本手法を用いて実際の生体試料として染色体および細胞切片を測定した.強い負帯電を有する染色体を用いて形状像および電荷分布像を取得し,染色体表面の電荷が基板表面に対して強く負に帯電しているイメージング結果を得た.ラット組織切片に関して,細胞内の核が他の小器官と比較して強く負に帯電している結果を得た.これにより,各部位を染色なく非標識で識別するラベルフリーイメージングでのナノ顕微法を実現し,本手法の有用性を示すことができた.また,これらの測定結果の妥当性を検討するためにワークステーションを用いたシミュレーションに着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の計画は帯電分布を計測するために,前年度に構築した走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)システムを改良し,表面帯電分布を可視化することであった.このために,前年度に原理検証した本手法におけるナノピペットの帯電を相殺したアプローチ後に,バイアス符号を切り替えて印加し,帯電状態の影響を受けたイオン電流を検出することで,表面形状と同時に帯電分布を可視化する手法を実現した.この手法を用いてテストサンプルでの動作確認に続き,生体試料でのパフォーマンスを実施した.このように,本手法の実証実験とパフォーマンスにより良好な結果を得ることができ,計画どおり,順調に進展できたと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
開発した帯電分布をナノスケールの分解能で微視的に可視化する手法は表面化学の分野において大変重要であり,広い応用が期待できる.このため,様々な試料を測定し,本手法の有効性を実証していく.生体試料のみでなく,電池電極界面の帯電イメージングなどを扱っていく.また,本手法の定量的測定法の開発に着手する.このために,ます,シンプルな帯電表面試料における実験とともに,ワークステーションを用いたシミュレーションを行い,比較しながら本手法の定量化を実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
測定器具,部品等の納品遅れなどで,装置開発において,当初の予定より遅延が生じてしまい,測定実験やシミュレーションに遅れが生じた.それに伴い,次年度使用額が生じた.使用計画としては,実験および装置調整のための消耗品を購入する.
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