研究課題/領域番号 |
19K22130
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
服部 賢 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (00222216)
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研究分担者 |
桃野 浩樹 米子工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40882527)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 電子制御 / 会合反応 / MOS構造 / 表面吸着分子 / ゲート電圧 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属-酸化物-半導体(MOS)構造の金属層と半導体の間にゲート電圧を印加し、半導体から金属層にトンネルした電子や正孔のエネルギーを、金属層表面に吸着したガス分子の触媒会合反応に誘導することに挑戦しています。電子励起による吸着分子の触媒会合反応は、反応で生じる新たな分子の脱離の測定より検証し、また反応ダイナミクスの理解のため、中間過程で生じる発光を同期測定することにより、エネルギー移動の機構を検討する計画です。 当該年度は、Pd/SiO2/Si MOS系におけるゲート電圧印加による (1/2)O2 + CO-> CO2 触媒会合反応の検証実験を開始しました。実験では、熱酸化膜 (10 nm)付き半導体シリコン基板上にPd金属膜を真空中にて約3 nm蒸着しMOS構造を作製しました。そのPd金属表面上に酸素分子 (18O2, m/z = 36)、一酸化炭素分子 (CO, m/z = 28)を各々数10 ラングミュア程度暴露後に、MOS構造にゲート電圧を印加し、四重極質量分析計にて生成脱離種の測定を行いました。その結果、±7 V以上の印加ゲート電圧にて二酸化炭素分子 (C16O18O, m/z = 46; C18O18O, m/z = 48)の生成が確認できました。この結果は、分子吸着表面へのホットキャリアーの注入、即ち電子励起による吸着分子の触媒会合反応を示唆する重要な結果であるといえます。この触媒会合反応の基準となる系で、電子励起誘起反応を最大化する諸条件を調べることにより、分子の化学反応を制御する夢の触媒シリコンデバイスの構築を推進させることが出来ます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、新規PC (Win10)に対応する脱離計測システムを構築することにより、触媒会合反応の検証実験を開始することができました。この点は予定通り順調に進んでおります。 しかしながら、発光計測システムの構築が2つの理由から遅れています。1つは、計測ソフト作成の遅延で、これは新たに加わった分担者(桃野・米子高専)が代表者ラボ(服部・奈良先端大)で構築する予定でしたが、コロナ禍のため分担者の出張ができていないことに因ります。もう1つは、真空装置に新たに組み込む予定の発光計測光学系の設計の遅延で、これは当初光ファイバーで設計する予定でしたが、適切なファイバー設置には特殊加工を施す必要が判明し、代替え手法を探る必要が出てきました。
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今後の研究の推進方策 |
Pd/SiO2/Si MOS系におけるゲート電圧印加による (1/2)O2 + CO-> CO2 触媒会合反応の検証実験を更に進めます。ホットキャリア注入量を増加させるため熱酸化膜厚を薄くする、電子励起誘起反応過程を明瞭化するため試料を(室温から約120 Kへと)低温化するなど、実験条件を最適化し、電子励起による吸着分子の触媒会合反応の実証に注力します。発光計測システムは、オンライン接続による分担者の計測ソフト作成、光ファイバーの代替え案の設計・作製を進めます。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」で記載しましたように、発光計測システムの構築にかかわる事項に遅れが生じたため、それにかかわる予算執行を次年度に移行しました。従って、「今後の研究の推進方策」で記載しましたように、2021年度の使用計画では、発光計測システムの構築を行い、かつ現在進行している電子励起による吸着分子の触媒会合反応の実証実験を継続して行います。
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