絶縁体中スピン流伝導の開拓

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K22131
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 安藤 和也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30579610)
• 研究期間 (年度): 2019-06-28 – 2021-03-31
• キーワード: スピントロニクス

研究実績の概要

本研究は、非線形スピントロニクス現象を用いた精密スピン流伝導測定により、反強磁性絶縁体中スピン流伝導を切り拓くものである。反強磁性絶縁体中のスピン流伝導はこれまで数多くの実験データが蓄積されてきた。しかし、スピン流源としては一様モードのマグノンにこれまで限定されており、スピン注入及びスピン伝導に対するマグノン波数の知見は得られていなかった。昨年度の研究により、反強磁性絶縁体へのスピン流注入を実現する最も典型的な構造である、強磁性/反強磁性絶縁体ヘテロ構造におけるスピン注入及びスピン伝導の波数依存性が明らかになった。これにより、強磁性体から反強磁性絶縁体へのスピン流注入・スピン伝導における界面交換バイアスの重要性を見出した。今年度は、スピン軌道トルク強磁性共鳴を用いてネール温度近傍におけるダンピングライクトルク及びフィールドライクトルクを測定することで、スピン流伝導を調べた。ダンピングライクトルクとフィールドライクトルクが重金属層のバルクスピン軌道相互作用に起因する強磁性金属/反強磁性絶縁体/重金属構造において、反強磁性絶縁層の膜厚によりネール温度を制御した。この系において、ネール温度より高温ではスピン透過率の減少によるダンピングライクトルクの減少が観測された。スピン伝導の抑制により減少したダンピングライクトルクに対し、フィールドライクトルクに関しては、絶縁層/重金属界面におけるスピン回転を伴う反射に起因する効果が観測された。

研究成果

• [雑誌論文] Study of spin mixing conductance of single oriented Pt in Pt/Ni81Fe19 heterostructure by spin pumping (2021)
  • 著者名/発表者名: You Yunfeng、Sakimura Hiroto、Harumoto Takashi、Nakamura Yoshio、Shi Ji、Song Cheng、Pan Feng、Ando Kazuya
  • 雑誌名: AIP Advances 巻: 11 ページ: 035211～035211
  • DOI: 10.1063/5.0035912
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Spin-orbit torques originating from the bulk and interface in Pt-based structures (2021)
  • 著者名/発表者名: Hayashi Hiroki、Musha Akira、Sakimura Hiroto、Ando Kazuya
  • 雑誌名: Physical Review Research 巻: 3 ページ: 013042-1-10
  • DOI: 10.1103/PhysRevResearch.3.013042
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Role of interfacial oxidation in the generation of spin-orbit torques (2020)
  • 著者名/発表者名: Haku Satoshi、Musha Akira、Gao Tenghua、Ando Kazuya
  • 雑誌名: Physical Review B 巻: 102 ページ: 024405-1-7
  • DOI: 10.1103/PhysRevB.102.024405
  • 査読あり
• [雑誌論文] Manipulation of perpendicular exchange bias and spin-orbit torques via MgO in Pt/Co/MgO films (2020)
  • 著者名/発表者名: Chen Zhiren、Pan Chunjiao、Wang Ning、Qiu Mingxia、Lin Tao、Liu Jing、Li Shunpu、Han Peigang、Shi Ji、Ando Kazuya、An Hongyu
  • 雑誌名: Journal of Magnetism and Magnetic Materials 巻: 507 ページ: 166822～166822
  • DOI: 10.1016/j.jmmm.2020.166822
  • 査読あり / 国際共著