研究課題/領域番号 |
19K22139
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三森 康義 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70375153)
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研究分担者 |
小川 佳宏 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50372462)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ヘテロダイン検波 / スピン / カー回転 |
研究実績の概要 |
近年、量子情報通信や記憶素子開発において固体中の電子・核スピンの利用が注目を集めている。そこではスピン軌道相互作用、交換相互作用などを利用し、スピン輸送・伝導によるスピン制御・マクロスコピックな核スピン偏極等がなされ、実空間からのスピンダイナミクスの測定が重要な研究手法となっている。本研究では高感度・短時間イメージング測定を実現するヘテロダイン検波型の光誘起カー回転イメージング分光法の開発を目的している。本年度は、イメージング分光の基幹技術となる単一プローブパルスによるヘテロダイン検波型光誘起カー回転分光法の開発・構築を行った。プローブ光とポンプ光を同軸に対物レンズに入射させ、サンプルからのプローブ光の反射光に周波数を1MHzずらした参照光(ローカルオシレータ)をビームスプリッタで合波し、ヘテロダイン検波型の偏光差動測定法(ブリッジ測定法)の開発を行った。テストサンプルとして単一量子ドット中の単一励起子を用いた。測定結果はポンプ光がプローブ光と同軸にあるにもかかわらず、単一励起子の時間分解光誘起カー回転角を非常に感度良く測定でき、ヘテロダイン検波型測定法の有効性を確認することができた。また、非常に微弱なプローブ光で極めて微小なカー回転角を示す単一量子ドットのカー回転測定に成功したことにより、ヘテロダイン検波型測定法が光学的にシグナルを増幅して測定できることを確認した。また、複数のGaAs量子井戸、バルクサンプルでも測定を行い、励起スポットが数ミクロンの場合と数十ミクロンの場合ではカー回転角の緩和時間が異なることが明らかになった。現在、この励起スポット依存性は励起子の拡散の効果と推定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ヘテロダイン検波型カーイメージング分光法の基幹部分の単一プローブパルスによるヘテロダイン検波型の偏光差動測定(ブリッジ測定)の開発を終え、テストサンプルとして単一量子ドット、量子井戸の測定に成功している。また、ヘテロダイン検波型のポンプ‐プローブイメージング分光法への拡張性に関しても目途を付けた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、順次プローブパルスの数を増やし、ヘテロダイン検波型のカーイメージング分光法の技術的確立を行う。イメージングを行うサンプルとして本年度測定した量子井戸中の励起子拡散に起因するスピン拡散、また、半導体2次元電子ガスのスピン流のイメージング測定を行いヘテロダイン検波型カーイメージング分光法の優位性を示すと同時に新規物性の測定に関しても研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた音響光学素子が販売停止になり機種選定に時間を要したため。今後は音響光学素子の購入、測定系の最適化、旅費等に充てる予定である。
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