研究課題
本年度は、2020年度までに得られた偏光を制御したダブルパルス励起による量子経路干渉実験の結果を理論的に説明した。主要な実験結果は「中心波長800nmの近赤外フェムト秒パルスレーザーを用いて、n-GaAs(001)をサンプルとして90Kにおけるダブルパルス励起過渡反射計測により、二つのパルスが平行の場合には電子コヒーレンスの干渉とフォノン干渉の両方が観測され、直交の場合にはフォノン干渉だけが観測できる」ことである。これまでに構築した量子理論モデルの改良を行い、任意の偏光条件でのダブル励起によるコヒーレント光学フォノン生成と制御を記述できるようになった。これまでの電子2バンドモデルにおいて、励起状態が2方向に分裂したモデルに改良し、電子フォノン相互作用にはラマンテンソルを用いた。また電子励起状態にはローレンツ型の有効バンドを仮定して電子コヒーレンスの緩和の効果を取り扱った。平行偏光、直交偏光での実験結果を、瞬間的誘導ラマン過程の量子経路干渉で良く再現できた。さらに、45度の相対偏光の場合には、瞬間的誘導ラマン過程での量子経路干渉縞に特有な浮き上がりが分裂することが示された。また、励起状態の有効バンド幅の変化による干渉縞の変化の理論計算も行うことができた。実験としては、45度偏光条件で、室温、90K、10Kでの計測を行い、低温になるほど電子コヒーレンスの保持時間が長くなる傾向を見ることができた。ただし、定量的な評価を行うためには、さらなる再現性の実験が必要である。また、理論モデル計算では、これまでの量子リウビル方程式を2次摂動計算する方法以外にも、電子2準位とフォノン2準位を基底関数として展開し、その係数の時間発展を微分方程式を解くことにより求めることができるようにした。これにより、励起光強度が強くなったときのフォノン生成の飽和の様子を調べることができた。
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Journal of Physical Chemistry Letters
巻: 13 ページ: 2584-2590
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Physical Review B
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https://www.titech.ac.jp/news/2021/062118