研究課題/領域番号 |
19K22142
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 原子層物質 / バレースピン / データー科学 |
研究実績の概要 |
近年、計算機科学・統計科学の進展を背景に高次元データーの中から本質的な要因を抽出することができるようになりつつある。物性科学においても計測技術の進展により数多くのデーターが取得できるようになり、その中からいかに本質を抽出するかの視点が重要となっている。そこで、本研究提案の目的は、高次元データーを基にした計算機・統計科学のアプローチを物性科学に積極的に取り込み、学術・応用上重要となる次世代バレートロニクスに求められるバレースピンの物理を理解し、高いバレースピン分極、極めて長いバレースピン分極保持時間、の実現に挑戦することである。 単層遷移金属ダイカルコゲナイドでは、円偏光光励起によってバレースピン分極した状態を生成できる。しかし実際には、バレースピン分極は有限かつ時間経過とともに低下し、極めて短い時間しか保持できず、その情報を得るには、分極に応じて右(左)回り円偏光成分の違いから生じる、発光ヘリシティを測る必要がある。研究計画の初年度は、一つはバレースピン分極の情報を含んだ大量の偏光分解分光スペクトルを取得し、統計解析を進める準備を整えることに注力した。その結果、偏光分解した空間分解発光マッピングの手法により複数のサンプルから3500を超えるスペクトルデーターを自動的に取得する事が可能となった。さらに、高次データー科学の一つのアプローチである機械学習を用い、ランダムフォレストのアルゴリズムによりその解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の初年度となる本年度は、高次元データー科学を行うために必要となるバレースピン分極の情報を含んだ大量の偏光分解分光スペクトルを取得し、統計解析を進める準備を整え、かつ、その一部を機械学習の一つである、ランダムフォレストのアルゴリズムによりその解析を順調に進める事ができたため、上記の判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降、バレースピン分極の情報を含むデーターは、高次データー科学によらない従来の解析ではスペクトル上に異なる起源のピークが重なり、スペクトル関数に任意性を含まず、かつ大量のスペクトル解析を行うことは困難であった。そこで、スペクトル解析に確率論的枠組みの一つである「ベイズ推定」などの手法を用い、ピーク数やモデル関数の指定など任意性を含まず大量のスペクトルを解析する手法を確立するために研究を進める。さらに、別の角度から、ランダムフォレストなど機械学習の方法を併用しながら、バレースピン分極に影響を与える物理因子を明らかにする研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、予定していたスペクトル取得用の光学系が、既存のものをベースにセットアップする事が可能である事が判明したため、次年度以降の実験セットアップ構築・シミュレーション用の計算機等に充填し研究を拡充すること検討している。
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