研究課題/領域番号 |
19K22146
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
的場 修 神戸大学, 先端融合研究環, 教授 (20282593)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | マルチスケール光スポット / ホログラフィー |
研究実績の概要 |
本研究では,様々なサイズの細胞や細胞内小器官を複数かつ同時に3次元光刺激するためのホログラフィック光スポット生成技術を構築するものである。可変スポットサイズを可能にするアプローチとして2つの方法を検討した。一つはホログラムによる光スポットの設計であり,もう一つはガルバノミラーによるビームスキャンによる方法である。ホログラムによる光スポットの設計に関して,今年度は1光子励起及び2光子励起の2つのホログラフィック光刺激システムにおいて,スポット径可変と各スポット均一化,スポット数可変技術について取り組んだ。刺激光には473nmのレーザー光を用い,位相変調型空間光変調素子を用いて刺激光の形と3次元分布を制御した。スポット径を可変にする位相ホログラム設計はGerchberg-Saxtonアルゴリズムをベースにした。実験サンプルとして青色光に反応して細胞内にCaイオンを放出する培養細胞を用いた。スポット径は1マイクロメートルから50マイクロメートルまで変化させた。実験結果から全体の強度が同じ場合に,照射する面積に比例してCaイオンによる蛍光強度が増加する傾向が見られた。1光子励起では奥行き方向の選択性が弱いため,近赤外光を用いた2光子吸収現象を利用した。刺激光として波長800nm(100fs, 1kHz)のフェムト秒パルスレーザー光を用いた。レーザーパワーを100mW~150mWの間に調整したとき,1平面で20個以上の細胞を選択的に刺激できることを確認した。次にガルバノミラーによるビームスキャンを用いたスポット径可変に関しては,レゾナント・ガルバノスキャナを購入し,波長800nm(100fs,80MHz)のフェムト秒レーザー光を用いて,スポットスキャンによる蛍光ビーズ及び細胞の蛍光観察を行なった。また,3次元蛍光分布を観察可能にする強度輸送方程式を用いた蛍光観察技術を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホログラムを用いた可変スポット径の生成とそれによる細胞刺激への利用については1光子励起及び2光子励起実験が順調に進んでいる。特に2光子励起による細胞刺激においては20個以上の細胞を同時刺激することに成功している。また,ガルバノミラーによるビームスキャンを用いたスポット径可変システムの構築も着手し,レゾナント・ガルバノスキャナとフェムト秒レーザー光を用いてスポットサイズを可変にする実験も進んでいる。さらに,奥行き方向の光スポット形成状態を観測するために,強度輸送方程式を用いた蛍光イメージング観察系を構築することに成功した。以上の結果から,概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ホログラム設計に関しては,スポット径内の強度分布の更なる均一化を実現するための実験系による補正システムを導入する。また,細胞サイズに合わせて,細胞内に回折限界サイズの複数スポットを形成する方法など細胞操作に適した光刺激方法を検討する。ガルバノスキャナを用いたスポットサイズ可変系では位相変調型空間光変調素子と組み合わせて3次元複数光スポットの形成を行なう。3次元光スポットの形成状態を観察するための3次元蛍光イメージング技術の構築も強度輸送方程式を用いた方法などを進める。
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