最終年度は、分子ドープ有機単結晶を波長変換材料に用いる集積RGB波長変換レーザ光源の要素技術であるGaN/空気-高反射率DBRを装荷した青紫色InGaNレーザの理論解析と構造作製、光励起発振による特性検証を行い、閾値電流50uA以下の超低閾値ナノレーザ実現の可能性を示した。また、酸化ガリウムと空気の高アスペクトDBR構造で挟まれたナノ流路に緑色発光有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶を選択的に析出させる技術を開発し、集積型波長変換RGB光源デバイスの原理検証に成功した。 研究期間全体では、新しい高効率発光デバイス材料として分子ドープ有機単結晶の可能性を提案し、ガラス板間の狭ギャップ中に溶液を入れて有機結晶を析出させるギャップ法、大気中の狭空間で有機分子を昇華再結晶化させるマイクロギャップ昇華法、新しい有機結晶成長法である薄膜不揮発性溶媒と静電塗布を組み合わせたナノミスト堆積(NMD)法による結晶成長によるo-MSBドープPBD単結晶(青色発光)やDCM・C6コドープPBD単結晶(橙色発光)などの分子ドープ有機単結晶の成長を実証した。また、得られた分子ドープ有機単結晶において、ナノ秒パルスでの誘導放出や高エネルギー移動効率を有する組合せを見出すことができた。特に、発光ドーパントとアシストドーパントをコドープした有機単結晶におけるエネルギー移動効率の向上現象は新規性と応用可能性が高く、有機単結晶による高輝度発光デバイスの実現に有用であることがわかった。最終年度には、溶液ベースの有機蛍光材料を無機半導体ナノ流路中に析出させる波長変換部や有機蛍光材料を励起するための低閾値InGaN-DBRレーザ等の要素技術の検証実験に成功したことから、分子ドープ単結晶を用いた有機無機ハイブリッド光デバイスの実現に向けた基礎技術が開発され、本研究の目標課題が達成されたといえる。
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