本研究は「CMOS互換プラズモニクス」を開拓するために、CMOSプロセスにおいて活用できるアルミニウムや銅を用いたプラズモニック導波路、およびそれとシリコン光導波路との層間結合構造を見出すことを目的としている。 本年度はまず、実際に研究代表者がシリコンフォトニクスプロセスで利用しているアルミニウム上での長距離伝搬プラズモンモードについて、有限要素法による解析を行った。長距離伝搬プラズモンモードは通常の局在性の高いプラズモンモードに比べて伝搬損失が小さいことから、有用性の高い伝搬モードである。まず作製プロセスにおける容易さを加味して幅を500nmで固定し、厚さを変化させたアルミニウム薄膜上のプラズモンモードを解析した。良く知られているように薄膜の表裏のプラズモンモードが対称に結合した長距離伝搬モードの存在が確認できたが、ウエハ構造、すなわちシリコン基板や限られたクラッド厚さによる非対称性を導入するとこのモードが励起されないことが分かった。このことは、これまで広く知られている薄膜上の長距離伝搬プラズモンがシリコンフォトニクスでは活用が難しいことを示している。一方で、薄膜の左右のエッジ界面のプラズモンモードが対称に結合した長距離伝搬モードの存在が確認できた。このモードは、ウエハ構造による上下の非対称性を導入しても、左右の対称性が保たれるため存在でき、さらに一般的に用いられるTEモードに該当するため、シリコンフォトニクスで活用できる長距離伝搬モードであることを見出した。 上記の左右対称な長距離伝搬モードの特性を実際に確認するため、テスト素子を設計してフォトマスクを調達し、試作を開始している。次年度において、テスト素子を用いてその特性を確認する予定である。また、シリコン光導波路との層間結合についての解析も進める。
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