研究課題/領域番号 |
19K22149
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森谷 祐一 東北大学, 工学研究科, 教授 (60261591)
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研究分担者 |
椋平 祐輔 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (60723799)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | スロー地震 / AE / 微小地震 |
研究実績の概要 |
自然地震の分野では,近年発見されたスロー地震と呼ばれる従来の地震より遅い滑り現象は,従来の地震に比べて明らかに周波数が低く,かつP波S波も不明瞭な波形(低周波地震)として観測される。能動的地熱開発・非在来型資源開発・二酸化炭素地下貯留等の地下流体エネルギー開発分野では,地下に流体を圧入し透水性改善を図るが,その際にも低周波地震が観測されるが,未だ物理現象は謎に包まれている。本研究では,貯留層内から発生する低周波地震を時間周波数解析により徹底的に解析し,その物理現象の解明を試みる研究である。本年度の成果の概要は下記のとおりである。オランダGroningenガスフィールドの連続取得波形データを対象とする。まず,日本の気象庁に相当するKNMI(オランダ王立気象研究所)から当フィールドの有望地域の連続波形を数か月分ダウンロードし,解析データセットを整備した。まず,徹底的に連続波形を目視で確認し,いくつかの低周波地震と疑わしき部分を抽出することに成功した。さらに本フィールドのデータに重畳する雑音の特性も目視により把握することができた。今後,機械学習等のフィルタリングを用いて雑音を一気に除去できる可能性があり,これは低周波地震の検出,解析を一気に進展させる可能性がある他,通常の微小地震の検出にも貢献できる可能性も大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果の概要は下記のとおりである。本研究では研究協力者の椋平助教がMIT滞在時に解析を実施していたオランダGroningenガスフィールドの連続取得波形データを対象とする。本フィールドでは低周波地震の発生が報告されており,世界中の研究者が各自各々の研究を実施している。Groningenガスフィールドでは,世界有数の微小地震観測網が整備され,低周波地震の解析に欠かせない常時連続計測が実施されており,この他に有望なフィールドはない。 まず,日本の気象庁に相当するKNMI(オランダ王立気象研究所)から当フィールドの有望地域の連続波形を数か月分ダウンロードし,解析データセットを整備した。本分野の低周波地震は未だそれほど解析事例がなく,自然地震学分野の低周波地震の解析手法の応用を期待しているが,現状そのまま使用できるとは限らない。まず,目視で徹底的に,連続波形を確認し,いくつかの低周波地震と疑わしき部分を特定することに成功した。 さらに,本フィールドの連続波形データの目視観察により,データに重畳する雑音の特性も掴めてきた。本フィールドでは地上からの文化ノイズが多い傾向があるが,地下200mのセンサでもノイズを観測してしまう場合もあり,同観測井内の全てのセンサで同様に観測してしまうために,物理現象由来の信号と混合しやすい。 以上のように,未知の物理現象の計測,解析に対してもっとも地道ではあるが,不可欠な生データの徹底的な観察がほぼ終わり,対象とする現象の確認,雑音特性の把握という本研究の目的達成に向けた第一ステップを確実にクリアすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 低周波地震の多成分時間―周波数特性の解析:初年度でほぼ特定できた低周波地震の3成分センサで取得した時間―周波数特性を把握し,今後どのような検出方法,解析方法が可能かを検討する。これにより,低周波イベントの発生領域に,既存のどのような手法を用いることができるかを決定できる。さらに他の低周波地震の検出に必要な周波数領域,解析手法も決定することができる。また,この時点で地震学分野での低周波地震の解析手法の応用を試みる。 (2) 機械学習等を用いた雑音の低減:本フィールドの雑音は人間活動由来の地上から地下に伝搬する非定常雑音が多いことがわかった。これは自然現象由来の信号と似た到来パターンを示すことがあり,観測点間の重合をする際に障害になる可能性がある。これは現在解析事例が蓄積しつつある機械学習の機能を用いて本フィールドの雑音を除去することを検討している。これらの雑音が除去された場合,低周波地震だけでなく,通常の微小地震の検出精度も飛躍的に上昇することが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
スリップイベント検出に時間を要したこと並びに新型コロナウイルス感染拡大の影響により研究者の往来・研究集会等の開催が出来なかったため.状況が改善すれば,当初計画に沿って進める.
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