研究課題
本プロジェクトでは、金属/炭化物(酸化物)2層界面における新しい照射誘起型の固相反応現象に対して、本研究ではより精緻で定量的な理解を深めるため実験手法を開発し、特に微細組織の観点で定量的な評価法として確立することを目的としている。酸化物分散強化鋼中の酸化物微粒子、鉄鋼材料中のM23C6型炭化物を研究対象として、鉄鋼中微小粒子の照射による不安定化現象について、イオン照射実験と電子顕微鏡観察実験を駆使して、微細構造変化の知見を整理し、照射誘起界面固相反応に係る実験手法について検討した。鉄鋼中酸化物微粒子および炭化物微粒子は、照射下において成長、収縮をランダムに繰り返しつつ、最終的に収縮消滅した。比較的小さな酸化物粒子は成長収縮の特徴が顕著に観察されたが、相対的に大きな炭化物粒子(特にM23C6)は単純収縮の傾向が顕著であった。これまでに電子照射による消滅プロセスを透過電子顕微鏡法、走査透過電子顕微鏡法、特性X線分光法を用いてメカニズムを明らかにしてきた。またその結果としての機械的特性の評価にも行い、照射硬化の結晶方位依存性を明らかにした。さらにこの現象には、照射欠陥を媒介とした粒子界面における物質の授受が関与していると考えられ、さらに鉄鋼母相への溶出挙動へも照射欠陥の影響が強いと考えられる。このことから粒子自体の照射影響を明らかにすることが重要との見解に至り、単体焼結体を合成しその照射実験を追加した。単体への照射実験については2021年度に実施することとしている。
2: おおむね順調に進展している
初年度の成果概要としては、酸化物分散強化鋼中の酸化物微粒子、鉄鋼材料中のM23C6型炭化物を対象として、それぞれの照射による不安定化現象について知見を整理し、照射誘起界面固相反応に係る実験手法について検討した。鉄鋼中の酸化物微粒子の照射下挙動については概ね当初予定通りの成果を得ている。炭化物の照射誘起非晶質化挙動に対する理解は大幅に進捗し、タングステンの影響など当初予測していなかった知見を得て、その詳細な検討を進めることができた。さらに単体焼結体への照射影響との比較により定量的な知見を得る見通しを得た。概ね順調に進捗していると評価される。
電子照射法を活用した照射誘起界面固相反応解明研究を継続する。単体への照射実験など新たな実験法の構築など先進的な課題に引き続きチャレンジする。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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