本年度は、ナノウィスカー成長条件の探索、エネルギー性能の評価を行うことを目的として検討を行った。ナノウィスカー成長のためには、結晶成長表面にナノサイズの液相を生成させる必要がある。YBa2Cu3Oy超伝導体の場合、Ba-Cu-O液相が成長溶媒として用いられる。本研究でもこれを用いたが、ナノサイズの液滴はできず、成長表面全体に広がる結果となった。これは、 YBa2Cu3Oy超伝導体表面においてBa-Cu-O液相の濡れ性が非常に高いことが原因である。以上より、 YBa2Cu3Oyナノウィスカーの生成には至らなかった。 しかしながら、 Ba-Cu-O液相を介した結晶成長によって、最大で26 nm/secもの成膜速度が得られた。なおかつ、結晶品質の高い YBa2Cu3Oy単結晶膜を10ミクロンもの厚さまで作製可能であることを明らかにした。従来法では、成膜速度が高くくなると結晶軸方位にずれが生じ、結晶品質が低下する問題点があったが、上記の成果はこれを克服する結果であり、産業分野への展開が期待できる。
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