研究課題/領域番号 |
19K22155
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
浅田 元子 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (10580954)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | バイオマス |
研究実績の概要 |
食料と競合しない未利用バイオマス(非可食セルロース系バイオマス)の総合的有効利用(バイオ燃料のみでなくバイオ化成品の製造などによる全成分利用)を目指したバイオリファイナリーシステムの開発は、新エネルギーと新高分子マテリアルの需要増加に伴い注目を集めている。国内外で研究が進められているにもかかわらず、実用化・産業化に耐え得るシステムはほとんど無い。その理由は石油由来と比較した際の製造過程と製造費用の過大と製品自体の優劣にある。それゆえ、高品質製品製造利益創出型のシステムを構築することは、将来の日本のエネルギーバランスに関わる一つの大きな課題であるため、これに挑戦したい。本提案システムは、燃料と同時に高付加価値物質を生産できる、塩触媒加圧型マイクロ波水熱前処理、耐塩耐熱性の酵素と酵母による糖化と発酵、発酵残渣からの有用製品産出を併合した、省エネ、低コスト、低環境負荷かつ減工程型プロセスである。食品添加物として身近なNaClやCaCl2、豆腐製造時のにがりであるMgCl2を触媒として用いた加圧式マイクロ波水熱処理を施し、バイオマスの前処理における最適な触媒および条件の検討を行った。処理温度200℃、処理時間5 minで2 wt% MgCl2を用いた加圧式マイクロ波水熱処理を施すことで酵素糖化後のグルコース生産量は未処理物より4倍高い原料1 gあたり0.36 gのグルコースを得た。また、さらなるコスト削減を目指し、マイクロ波処理後残渣の洗浄工程の省略化に伴う酵素糖化及び同時糖化発酵への影響を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サトウキビバガスを用いた塩触媒型加圧式マイクロ波水熱処理においてMgCl2が最適な塩触媒であることを究明し、その最適処理条件を決定した。さらに、塩触媒型加圧式マイクロ波水熱処理後の蒸留水による洗浄工程を省略しても耐熱耐塩性Saccharomyces cerevisiae BA11を用いた同時糖化発酵における最大エタノール生産量が低下しないことを明らかにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は塩触媒型加圧式マイクロ波水熱処理に用いる塩触媒の回収や繰り返し利用の方法、バイオエタノール生産のためのプロセスの最適化および発酵残渣物の有用資源化に取組む予定である。なお、発酵残渣物中には主に低分子量リグニンが含まれているので、低分子量リグニンの効率的抽出分離法の確立および低分子量リグニン量を原料とした機能性樹脂の創製を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定した塩触媒型加圧式マイクロ波水熱処理によるサトウキビバガスの前処理実験が既存の実験装置で研究遂行ができたために次年度使用額が生じた。次年度の本プロセスの最適化および発酵残渣物の有用資源化のために次年度予算と合わせて使用する予定である。
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