研究課題/領域番号 |
19K22156
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三木 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10706386)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 電気化学 / 粉末電極 / 湿式精錬 / 浮遊選別 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
各種硫化鉱物(黄銅鉱、斑銅鉱、輝水鉛鉱、硫ヒ銅鉱、黄鉄鉱)の酸化還元反応に着目し、黄銅鉱、斑銅鉱、硫ヒ銅鉱については精鉱粉末試料浸出の挙動、黄銅鉱、斑銅鉱、輝水鉛鉱、硫ヒ銅鉱、黄鉄鉱については、浮遊選別法における表面の親水性、疎水性の評価を行い、表面反応機構について検討を行った。 精鉱粉末試料の浸出挙動については、従来高い酸化還元電位で浸出することが知られていた黄銅鉱が、低い電位域で進出促進されるという現象を、黄銅鉱がより酸化浸出されやすい輝銅鉱に還元されるためという機構について検証できた。斑銅鉱、硫ヒ銅鉱についても類似した機構が起こりえるが、電気化学分析及び熱力学計算により、黄銅鉱のみで低い電位域での進出促進が起こり得ることを確認した。硫ヒ銅鉱については、高い電位を保持するために、活性炭などの添加物が有効であり、このことは活性炭と硫ヒ銅鉱の接触によるガルバニック反応が役割を果たしていることを見出した。この検証のために、これまでほとんど行われていなかったガルバニック電流の測定を行った。 一方で、浮遊選別における各種鉱物試料の酸化還元剤の影響について検討を行った。各種酸化還元反応の評価、表面沈殿反応と生成物の評価により、過酸化水素水を添加することにより黄銅鉱が選択的に親水化され、硫ヒ銅鉱が疎水化される反応、ピロ亜硫酸ナトリウムの添加により黄銅鉱が選択的に親水化され、輝水鉛鉱が疎水化される反応について、機構を検証した。これらの反応により、従来難しいと思われてきた銅-ヒ素の分離、銅-モリブデンの分離が比較的簡単に行うことができるものと考えられる。 本研究による電気化学的手法によって、これら浸出、浮遊選別の新しい機構の解明に貢献できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種電気化学手法の適用により、これまでの溶液分析や固体表面分析では難しかった、表面反応や接触時の反応(ガルバニック反応)の評価が可能となり、銅精鉱の湿式精錬、難処理銅精鉱の浮遊選別などについてより定量的で熱力学的評価の根拠のある機構の説明ができ、これら実精鉱の処理の研究に貢献できた。特に黄銅鉱、黄鉄鉱、硫ヒ銅鉱、活性炭の接触による反応の評価については、ガルバニック電流の測定による系統的な説明ができた。浮遊選別における酸化還元剤の効果についても、表面沈殿の評価などを熱力学および電気化学手法を用いて検討し、熱力学ソフトの計算結果と比較しながら反応機構の評価ができた。これらの手法をより詳細に検討するため、電気化学測定装置を購入し、更なる実験環境の整備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度得られた結果を基に、別の鉱物でも同様な結果が得られるかどうかについて検討を行う。また粉末電極の開発について、より微量の超微量粉末電極の開発について検討し、この性能について評価を行う。昨年度行ってきた、湿式精錬、浮遊選別における応用のための反応槽を制作し、より実操業に近い環境での評価、精密な酸化還元電位の制御による反応機構の定量について検討を行う。これら新規に開発した反応槽、電極を従来の電気化学的手法の挙動と比較し、より詳細な反応モデル、速度論的評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室既存の設備、試薬を使用することにより昨年度使用額が予定より少なくなった。また当初の計画で昨年度作成する予定だった反応槽、超微量粉末電極作用極など、設計のみ行ったため昨年度は使用額としてはなかった。今年度は、昨年度設計を行ったこれらの装置を作成し、またこれらを使用した実験を行うことを使用計画としている。
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