最終年度に実施した研究としては、各種硫化鉱物(黄銅鉱、斑銅鉱、銅藍、輝銅鉱、ヒ四面銅鉱、硫ヒ銅鉱、黄鉄鉱)の粉末試料電極の挙動について、昨年度より詳細に検討を行った。電極の材質、分散法の改良(テフロンに囲まれた炭素電極の使用)により、より再現性が高い結果が得られるようになった。これらの改善を基に、硫化鉱物の湿式精錬における浸出挙動、浮遊選別における酸化還元反応の評価を行った。また、これらの試料の混合した含ヒ素銅精鉱のキャラクタリゼーションへの応用を行った。鉱物によりピークの電位、ピークの数などが異なるが、これらの鉱物の混合割合に比例したピーク電流を重ね合わせたときのボルタモグラムと、精鉱自体を粉末電極にした場合のボルタモグラムの形は類似しており、ある程度のキャラクタリゼーションに応用できることを見出した。ピークの高さ、位置などに純粋鉱物と比較して相違が見られたが、精鉱中に含まれる酸化鉱の影響、鉱物同士の接触によるガルバニック効果の影響と考えられ、これらの結果による、精鉱の溶液中の挙動を予想できた。湿式精錬への応用として、カーボン成分の分解処理を行った黄鉄鉱のインピーダンス分析を行ったところ、処理を行わないものと比較してインピーダンスが低くなっている結果が得られた。昨年度から引き続き、銅精鉱からのヒ素、モリブデン分離のための浮遊選別における影響についても検討を行ってきたが、熱力学的な評価の結果と、電気化学的手法による結果、XPSなどの表面分析とを比較して、より詳細な分析を行うことが出来た。すなわち、過酸化水素水およびピロ亜硫酸ナトリウムによる酸化還元処理により、ヒ素鉱物、モリブデン鉱物が疎水性を保つことと比較して、銅鉱物は表面が親水性の生成物に被覆されることにより、選択浮遊選別分離が可能となった。粉末電極法の確立、湿式精錬と浮遊選別における応用が研究実績の概要となる。
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