研究課題/領域番号 |
19K22157
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺西 亮 九州大学, 工学研究院, 教授 (70415941)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 超伝導体 / 接合 / 結晶成長 / 固相拡散 / 熱処理 / 結晶方位 / 微構造解析 |
研究実績の概要 |
GdBCO線材を接合する際の重要な組織制御因子としては、熱処理時の機械的圧力、接合温度、酸素分圧などが挙げられ、昨年度までに機械的圧力が接合試料の組織や特性に及ぼす影響を明らかにしてきた。本年度は、熱処理温度が接合部の結晶組織に及ぼす影響を調査した。 GdBCO層上にパルスレーザー蒸着法にてGd、Ba、Cuの酸化物からなる前駆体を追加堆積し、それらを対向させて約10 MPaの機械的圧力を印加しながら993 Kから1193 Kの温度条件下で1.5 h結晶化熱処理を施して接合体を得た。得られた試料の接合部を剥がしたのち、X線回折による解析法(XRD)にて線材の対向部と非対向部の生成相を評価した。 その結果、993 Kおよび1093 Kでは、対向部と非対向部のいずれもGdBCOの00lピークが下地線材のGdBCO相と同程度で強く観察され、また、第二相に起因するピークは観測されなかった。その一方、1093 Kでは対向部と非対向部のいずれもGdBCO相に起因するピークは現れず、Gd2O3、BaCu2O2、Gd2BaCuO5などの第二相が多数観測された。以上より、接合時の熱処理温度に適切な温度範囲があることが示され、本実験条件の温度範囲では1193 Kまで温度を上昇させると下地線材のGdBCO層までもが分解してしまうことが明らかとなった。 これまでの知見として、接合時の機械的圧力および熱処理温度が接合組織や結晶相に及ぼす影響が明らかとなり、結晶配向性の高い組織を得るための条件が示された。今後は、熱処理時のガス雰囲気(酸素濃度)の影響を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度の昨年度は、コロナウイルス感染症の影響を受け(学内立ち入り禁止期間や当該テーマに従事する学生らの登校禁止期間などがあった)、当初予定した研究時間や内容を確保することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間が1年延長となったことから、当初計画のうち未達の内容については本年度に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は研究計画の最終年度の予定であったが、コロナウイルス感染症の影響により当初計画通りに遂行することができなかったため、使用予定額に差額が生じた。研究期間が1年延長されることとなったことから、本年度、差額を用いて当初予定の研究を遂行する予定としている。
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