研究課題/領域番号 |
19K22161
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
歸家 令果 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10401168)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 分子構造 / 電子回折 / 化学反応動力学 / クラスター / イオントラップ |
研究実績の概要 |
当初の計画では、運動エネルギー20 keVの電子線入射による背景信号を測定し、信号強度や背景信号画像の実験条件依存性を検討することによって、背景信号の原因を解明するとともに、電子線ダンパーや電子銃の改良を行うことによって、背景信号の抑制に努める計画であった。 令和元年度は、当初の計画通りに運動エネルギー20 keVの電子線入射による背景信号を測定し、信号強度や背景信号画像の実験条件依存性を検討した。背景信号の原因を検討した結果、ビームダンパー内に設置されたファラデーカップに入射電子線が衝突したときに生じる反射電子が背景信号の主な要因であることを突き止めた。そこで、ファラデーカップの設置位置や構造を改良するとともに、電子線ダンパーに永久磁石を取り付けることによって反射電子の軌道を曲げて背景信号を抑制することを試みた。その結果、背景信号の大幅な抑制に成功した。さらに、超高真空チャンバーを長時間ベーキングして、真空チャンバー内の残留ガス密度を抑えることによって、残留ガスによる電子散乱由来の背景信号を大幅に減少させた。その結果、高強度の入射電子線を用いた捕捉イオン電子回折実験が可能となり、Paul型RFイオントラップに捕捉されたCCl3+イオンからの散乱電子信号を約10カウント毎秒で計測できるようになった。また、高強度入射電子線を用いた背景信号測定の結果、背景信号の強度は入射電子線のアライメントや電子線ダンパーに設置した永久磁石の位置に極めて敏感であり、電子線ダンパーの構造に更なる改良の余地があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
背景信号の抑制が当初の計画以上に進み、捕捉イオンからの散乱電子信号の計測まで試すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
新たに開発するビームダンパーの構造設計のために、背景信号が増大したり減少したりする条件をさらに注意深く調べる。設計したビームダンパーを製作し、背景信号がどの程度減少するか検証する。同時に、CCl3+イオンの生成効率の改善のために、光イオン化用のフェムト秒レーザーパルスの集光条件を改良する。これらの改良を行ったのちに、Paul型RFイオントラップに捕捉されたCCl3+イオンからの散乱電子信号の測定に再度挑戦し、CCl3+イオンの電子回折パターンの計測を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ビームダンパーの改造費用が当初の計画よりも低く抑えることができたため、次年度使用額が生じた。この資金はビームダンパーの更なる改造のために使用する。
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