研究課題/領域番号 |
19K22164
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
水瀬 賢太 東京工業大学, 理学院, 助教 (70613157)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | 分子分光学 / クラスター化学 / 反応動力学 / フェムト秒化学 / 画像観測 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子の超高速振動・回転波束運動をスナップショット的に画像化する申請者独自の技術を用いた新しい分子分光法を開発・展開し、これまで未知だった物性の測定を通じて分子科学・物質科学の発展に寄与することを目的としている。提案手法は分子運動における動的挙動を画像の時間変化として観測し、そのフーリエ変換から周波数領域の分光情報を抽出するものである。本手法により、従来の周波数領域高分解能分光では研究が困難とされてきた永久双極子をもたない分子種の分光実験が可能になると期待される。今年度までの研究では、永久双極子を持たない、もしくは分子系内部で打ち消しあってしまう系の検出が可能な画像観測装置の設計・開発・改良を行った。原理検証が済んでいた窒素多量体に加え、脂肪族炭化水素系のような、有機分子間相互作用の研究に効果的な分子系の分子数選別画像観測に成功している。この装置を、広帯域励起光源・時間分解ポンププローブ光学系を組み合わせることで波束イメージング分光が可能となる。光源としては、励起光の帯域がスペクトル帯域に直結する。分子間振動や大振幅振動を含む10THzをカバーできるものを立ち上げている。周波数分解能はポンププローブの遅延時間の逆数に対応する。既存の手法では数ナノ秒の遅延(数100MHz分解能)のものがほとんどであったが、本年度の研究では、多重周回光学系を新規に設計し、数10MHzの周波数分解能を達成できるセットアップを構築した。多重周回で生じる光路の不安定さが生じており、安定化マウント、光路のカバー導入、分子線の追跡の導入などを進め、さらなる分解能向上を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2年計画であり、1年目終了までに光学系の構築まで達成することができているため。順調に進んだ分、前倒し申請も行い、効率的に研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
測定系のおおよそのセットアップが完了したため、実際の画像測定・分光測定を進めつつ測定の最適化や新しいデータだからこそ得られる分子情報の精査を進めていく。測定の最適化にあたり、長光路光学系の安定運用が必要となる。ビームの安定性、温度などの環境擾乱への適用、遅延時間中の分子の併進による信号コントラストの低下への対応といった課題が生じうる。励起光ビームサイズの調整、光路の安定化を含めて対応していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗にともなって前倒し請求を行った。国際情勢等によって一部物品が次年度納入分になったため、次年度使用額が生じている。一部真空関係の消耗品に予定通り使用するため研究には問題ない。
|